「問題を知るには、自分が問題の一部になる」スーパーサイズ・ミー ホーリーチキン! tokyotonbiさんの映画レビュー(感想・評価)
問題を知るには、自分が問題の一部になる
今回は、チキンをターゲットに監督が自分で店を立ち上げて、問題提起する映画だ。
世界で一番消費されている肉は鶏肉らしい。正直最初からワクワクした。
監督はチキンサンドを売るために、店の立ち上げから、原料となる鶏のひよこの入手からスタートする。しかし最初から監督は行き詰まってしまう。多くの養鶏場はビッグチキンと呼ばれる大手ファーストフード会社(KFCなど)が握っており、養鶏も加工も全てその会社の指示で動いているという。なので個人企業の監督には卸せない。
監督は四方に電話して個人にもひよこを売ってくれるところ、また養鶏場の一部を貸し出し育成してくれるところを探すことになる。
これと同時進行して、顧客売れる品物にするために、メニュー研究、お店のロゴデザイン、店の購入、内装リフォーム、監督自ら出演するTVを利用して店の宣伝などなど具体的に現実にしていく様子はそれだけでもとてもおもしろい。各専門家の協力を得ながら、他のファーストフード店調査も取り入れて、現代の客が求める味とイメージについて切り込んでいく。
私達が普段一体どれだけ効果のない、ただ健康をイメージさせる言葉で健康になった気でいるか教えられているようだ。
屋外飼育の定義がほとんど意味をなしていないのには笑ってしまった。
また食用となるチキン、ニワトリについても、ただ残酷に畜殺されるということではなく、一体どんな生き物になっているのかということをこれまたリアルに伝えてくれる。
現在食用鶏は、普通成鳥になるまで倍以上かかるはずの期間を飛ばしておよそ6週間で成鳥となるよう交配を重ねているようだ。早くて肉付きよく育てばそれだけ消費に繋がる。
しかしもちろん急激な成鳥は、ニワトリにとっては害でしか無い。ニワトリは様々な病気になり、心臓発作を起こしたり、身体を支えきれず骨が曲がったり骨折して途中で死んでしまう個体も出るという。せめて人道的な育成を、処理をと思っても、現実の需要と供給の上では成り立たない。
ここまで具体的に知れたのはこの映画が私は初めてだった。
また問題はそれだけではない、養鶏家に課されるビッグチキンからの支配的な独占環境、他と競わせ、また評価の軸も曖昧で、前年一位だったところが翌年には最下位に転落することもあるという。
ビッグチキンはヒナの出荷をコントロール下に押さえており、なにか不都合なことをされれば弱いヒナを送りつけられる恐れもあるようだ。
CMで養鶏場、スタッフたちと仲良く経営を行っているとPRする企業はその養鶏場から訴えられていることが作中で伝えられる。経営で借金を途切れさせず行わせ、このままでは後継も身内にさせたくない、辛いからと訴える養鶏家の声が悲痛だった。
立ち上げた店ではその軌跡がコメディタッチに、しかし数字と写真をもってしてお客に伝えられる。不都合な真実というよりかは、どうアクセスすればいいかわからなかった情報たちだ。
エピローグでは前作同様、その後のエピソードが少し語られる。
チキンを食べることはやめないけど、自分で判断するためにもこの映画を見れてよかったと思う。とてもおもしろかった。