劇場公開日 2021年9月23日

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「ムロツヨシを堪能!」マイ・ダディ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ムロツヨシを堪能!

2021年9月26日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

それほど気にかけていた作品ではないですが、大好きなムロツヨシさん主演で、レビュー評価も高かったので、鑑賞してきました。率直に言って、ありがちな話ではありましたが、鑑賞後の印象は悪くなかったです。

ストーリーは、白血病の娘を助けようと奔走する父親が、骨髄移植を考える中で、娘の出生の秘密に気づくというもの。今までもどこかで見たことがあるようなストーリーで、特に目新しさはありません。この手の話は、先の展開もオチも十分に予想でき、本作も実際にその通りに進みます。

しかし、本作の見どころは、全編にわたって娘のために全力を尽くし続ける、父親役のムロツヨシさんの渾身の演技にあります。とぼけた笑いを醸し出すいつものムロツヨシは封印し、魂を揺さぶるような演技が秀逸です。娘のひかり役は中田乃愛さんで、新人らしい初々しさを残しつつも、病気と出生の秘密に揺れる多感な娘役を好演しています。奈緒さんも、いつもとはちょっと違う、健気な母親役がよかったです。あと、なにげに光石研さんがいい味を出していて、彼の存在がムロ牧師の温かい人柄を浮き彫りにしていたと思います。酒を酌み交わすシーンや仲間とともに病院に押し寄せるシーンは、思わず目頭が熱くなりました。

ただ、冒頭でも述べたように展開がありがちなだけに、それぞれの人物をもう少し掘り下げてくれたらなと思わなくもないです。毎熊さんの心変わりの理由、スタンドのバイトの兄ちゃんの変容、奈緒さんの苦悩、父娘の確執など、もちろん描かれてはいるのですが、ややあっさりとした印象でした。もう少し御堂牧師との関わりの中で、彼のひたむきさが周囲の心を揺り動かしたと実感できるとよかったかなと思います。

「神は耐えられない試練は与えない」とはいえ、本作で御堂家に与えられた試練は苦しすぎます。しかし、江津子が気づいた娘の出生の秘密、ひかりの白血病と骨髄移植、一男とひかりの血のつながり、この試練を親子三人で8年越しで乗り越えたのかと思うと、胸が熱くなります。ムロツヨシさんが好きなら、彼の新たな一面を発見できる本作を見て損はないと思います。

おじゃる