劇場公開日 2021年9月23日

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「神様に問い、運命に立ち向かう…ムロツヨシの人柄も相まって包まれる"愛"の化学反応」マイ・ダディ たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0神様に問い、運命に立ち向かう…ムロツヨシの人柄も相まって包まれる"愛"の化学反応

2021年9月6日
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鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

幸せ

久々にハンカチを思い切り濡らしてしまった…。序盤から驚きの展開で、芯に問いかけてくる"愛"が凄い良作。

さすがはTSUTAYA CREATOR'S PROGRAM。コンペで選ばれた脚本だけあって重層的。まだ観る前、このフライヤーをもらった時、あらすじを読んで2回も「えっ!?」と声が出た。それほど凄く重いのだが、だからこそテーマとなる"愛"がより明瞭になる。

主役はムロツヨシ。念願の映画初主演だと言う。そんな彼のシリアスで緩急の付いた演技が涙を誘う。どうすることも出来ないような困難を懸命にもがきながら立ち向かう。しかも、彼は牧師なのだ。『僕はイエス様が嫌い』のように、乗り越えられない試練を与えないはずの神が何故こんな試練を与えるのか…という矛盾への葛藤が彼の姿にも見え隠れする。それでも牧師として、時に一人の人間としての想いが勝りながら、困難に立ち向かう様は心に深く刺さる。

そしてもう二人、中田乃愛と奈緒は忘れてはならない。中田乃愛は白血病と闘う思春期の娘を体当たりで演じている。クシャッとした笑顔が印象的なニューカマーだが、その作品に多大なエネルギーをもたらしてくれる。一方の奈緒、こちらも振る舞いや表情が上手く、感情を刺激してくる。序盤は少し「ん?」となるが、その泣き顔に滲む苦悩が胸を締め付ける。

脚本が重層的と言ったが、実は画もかなりこだわって作られているのが分かる。ポスターからも感じるように、黄色を基調とした作中の色づくりがなされており、穏やかで優しい雰囲気が木漏れ日のように作品を包み込んでいる。また、シナリオも決して器用とまでは行かないが、あらゆる問題を綺麗事で片付けず、真剣に描き切っている為、こちらも心に深く届く。上映10分で泣いてしまったのは『聲の形』以来かもしれない。それほど序盤からドラマの起伏が大きく、それを超える良質なドラマへと仕上げている。

まだ情報解禁前なので言えないが、ある方の登場には唸ってしまった。役者として、人として愛されているムロツヨシだからこそ出来る"愛"のドラマ。エンドロール、カーリングシトーンズが「それは愛なんだぜ!」と締めてくれる。それもまた、男臭くて不器用で真っ直ぐな彼の姿を照らしてくれている。この秋オススメしたい良作だ。

たいよーさん。