「性的搾取」SNS 少女たちの10日間 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
性的搾取
本作はチェコで作られた作品。もし日本で作られても内容に恐らく大差ないだろう。ちなみに男女平等ランキングでチェコは76位で日本は116位。
搾取は人類史において切っても切り離せない。水が上から下へ流れるように強いものが弱いものを搾取する。帝国主義の時代は国ぐるみで他国を植民地化しては搾取を繰り返した。
民主主義、人権、それらの意識が人類の間に高まっても、経済的搾取、性的搾取は未だになくならない。弱いものは強いものに常に搾取され続けている。
本作に出てくる男たちの心理は少なからず理解はできる。男が男で生まれた時点でその性衝動を如何にして昇華するかが重要だ。どんな男でも性衝動に悩まされる。だからそれが商売として成り立つ。
どんなに立派な紳士に見えても性衝動の前には盛りのついた犬のように人の足にいちもつをこすりつける。かわいいオスのチワワを飼ってる女性はそういう様を見たことがあるはずだ。所詮オスはあらかじめ子孫を残すための性衝動が遺伝子に組み込まれている哀れな生き物だ。
だが人は犬ではない。そこらじゅうで自身の性衝動を吐き出すわけにはいかない。だから自身の性衝動と折り合いを付けなければならない。社会性を手に入れた高等生物ならば自身の原始的な衝動を抑制せねばならない。それが人間たるゆえんだ。だが、どうしても自身の欲求を制御できない人間もいる。あるいはその衝動の吐き出し方を誤る人間もいる。
法規制が及ばないネットの世界は彼らにとってはおあつらえの場所だった。法規制が追い付かないからこそ、規範意識は鈍麻し自らの性衝動を解放させることができた。
彼らが選ぶターゲットは常に未熟な十代の少女だ。社会経験の少ない少女なら与しやすいからであろう。ここでもやはり強いものが弱いものを搾取する構図が成り立つ。
彼らも普段は職場や家庭ではごく普通の人間なのだろう。本作で唯一モザイクを消されたイケメンと彼らに大差ない、私と彼らに大差がないように。ほんの少しの違いだけだ。私の場合は羞恥心が強く他人と性に関してあけっぴろげにできない性格だった。だからたとえ無法地帯のネット上であってもあんなことは出来ない。だが、もしそういう性格でなかったら彼らと同じことをしていたかもしれない。彼らと自分は紙一重なのだと思う。もちろん法学部だったから規範意識は人一倍だが。
彼らの規範意識を失わせるサイトの存在が根本的な原因であるとも語られる。広告収入欲しさに規制を敷かない運営者側にも大きな責任はあるだろう。
企業が利益を求めるあまり汚物を垂れ流して健康被害を及ぼす公害問題との類似性を感じた。
サイトによる被害者からの訴えを無視し続けている日本の有名インフルエンサーなんかをみていると実に頭が痛い。
社会経験の少ない子供は好奇心のほうが勝っており世界中の見知らぬ人間と瞬時につながれるSNSはどこでもドアのような魅力的な魔法。
昔は変質者の露出魔なんかがいて自分の一物を見せられるなんて私の世代には多かった。ある意味通過儀礼だ。そこで世の中には得体の知れない人間の存在を学べた。いまはその役割もネットが担う。単なる通過儀礼に終わればいいが実際に現実世界で会うことになると身に危険が及ぶ。
現実社会と比較して圧倒的に法整備が遅れてるネットの世界、最近やたらとニュースになってるブラックバイトなんかも若い子がターゲットになっている。速やかな法整備が急がれる。