「企画ありき」SNS 少女たちの10日間 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
企画ありき
「童顔の成人女性を集めて、12歳としてSNSにアカウントを持たせたら、少女目当ての大人達がどれだけ釣れるのかを検証した」
という、企画は確かに興味深い。
いろんな問題提起をしていることは分かるが、ドキュメンタリー映画として観るには中身はまっとう過ぎる…というか、想像通りというか。
企画という性質上、エスカレートしやすい様に「仕向けている」部分も否定は出来ないだろうし。
とはいえ、予告編の枠をほとんどはみ出すことなく、えげつない映像で「グェ…」とは思うけど、結局加害者達の行為も、最終的な結論もこちらが比較的思い描いていたゴールに導かれたのはやはり物足りなく感じる。
個人的には、こういう犯罪者に関しては「被害者が子供という意味で罪になるのは仕方ないが、先天的に『小児性愛』という嗜好を持って生まれてしまった人にとっては、報われることのない世界なんだろう」と思う側面もあった。しかし、作品の中で専門家によって「こういう犯罪に手を染める犯人達で『小児性愛』に該当するのは数パーセントしかいません」と説明される。
つまり、こいつらは幼い少女にのみ発情する訳ではなく、判断力のない子供だからこそ言葉巧みに取り入って、最終的には脅迫で精神的に支配し、自分の性的なはけ口にするだけのまさにただの『クズ』なんだと。
それが分かっただけでも私には収穫があった。
あと気になったのは、なんでヌードモデルまで使って顔をすげ替えたフェイク写真を作成し、わざわざ男に送ったんだろう。(企画の最初からそういう設定になっているんだが)
脅迫の手段として彼らが写真をネットにアップする可能性は十分に考えられた訳だし、顔付きの写真が放逐されてしまったら、その裸がホンモノかニセモノかなんてことは関係なく現実のその女性に被害が及ぶのは分かっていたはずなのに、コトが起こってから慌てふためくのは、申し訳ないけどあまりに軽率すぎて、これ自体がフェイクなのでは?と思ってしまった。
もう一つ。
映画に登場する男達によるネット越しの行為に対して、観客の一部男性から笑いが起こっていた。
男性が同性の性処理に関する話題を、長く「下ネタ」などと名付けて笑いのタネにしてきた弊害なんだろう。
残念ながら作り手もそれを「滑稽なもの」と誘導しているシーンが幾つもあった。少なくともこの作品が持つ意味を考えたら、そういった捉え方ができるような演出は控えるべきだったのではないか。
悪質なセクハラ加害者たちを「いやぁ、ジョークだよ、ジョーク」に逃げ込ませてはいけない。
ここで起きているのは明らかな「虐待行為」であり、相手の子供や女性は精神に深い傷を受け、自死に至るケースもあるときちんと説明されているんだから。
ただ、捉え方は観客の環境にも影響されるんだろう。
私は子供達と関わる環境なのでより強く感じてしまう。
日本でも、Twitterなどで女性タレントがこういう被害を受けていると聞くことも多い。
他人事ではない。