「人間の記憶を脳の記憶回路から再生映像化して記録もできるようになった近未来世界と古典的なフィルム・ノワールのプロットとを融合させた佳作。いい大人の純愛物語にも😢」レミニセンス もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の記憶を脳の記憶回路から再生映像化して記録もできるようになった近未来世界と古典的なフィルム・ノワールのプロットとを融合させた佳作。いい大人の純愛物語にも😢
①先ずは宣伝内容の大嘘には文句を言いたい。人の記憶に「潜入」するのではなく、人の記憶を脳の中の記憶回路から抽出して再生映像化・記録するだけのこと。手掛かりをそうやって映像化・記録した記憶の中から捜すという形を取ったミステリーだと思えば良い。“reminiscence”という英単語には「記憶された出来事」という意味だけで「潜入」などというニュアンスはこれっぽっちもないし。ヒュー・ジャックマンもエージェントでも何でもなく、人に記録化した過去の幸せな記憶を見せる商売をしているだけだし。記憶が犯罪の証拠になる世界になったので時々警察のお手伝いをしているだけだし。②脳の中で記憶を司っているのは「海馬」であることは今ではほぼ誰でも知っていることだが、そこに貯められる記憶というのは目・耳・鼻が客観的に捉えた事実であるのか(思い出す時には自分の都合の良い様に書き換えて思い出すのか、自分に都合の良い部分だけ思い出すのか)、そもそもそういう風に人が自分に都合の良いように書き換えた記憶が蓄積されるのか。こういうことを考察するのも面白いが映画の本筋には関係ないので此処等で止めときましょう。③現実パートと記憶パートとの切り替えも不自然ではなく、伏線の回収も出来ていて分かりづらいところは殆んどなく娯楽映画としては問題ない出来。考えてみれば映画でよく用いられる回想シーンが記憶パートに変わっているだけで元々映画に向いた題材だったかも知れない。⑤ヒュー・ジャックマンは50過ぎたオッサンの、好きになった女性への妄執に囚われる姿と、彼女の正体を知った後も愛し続ける姿を演じて違和感がないところはやはり現代のスター俳優の魅力である。④レベッカ・ファーガスンもこの SF film noir におけるfemme fatal に当たるメイを演じて魅力的。最後、過去の悪業を精算するように少年を守るために我が身を犠牲にする姿も印象に残る。この女優の男の眼を覗き込む時の眼の動かし方が、同じスウェーデン出身のせいか、その先輩を知らず知らず真似しているのか、イングリット・バーグマンのそれと似ているのはご愛敬。⑥タンディ・ニュートンも過去女兵士であったタフさを感じさせつつ、密かに慕っていたヒュー・ジャックマンが他の女に惹かれていくのを複雑な想いで見ながらそれでもサポートするワッツを好助演。作品に深みを与えている。