「色々と惜しい。80点になれるポテンシャルは持ってる50点の作品」レミニセンス SSYMさんの映画レビュー(感想・評価)
色々と惜しい。80点になれるポテンシャルは持ってる50点の作品
冒頭から詩的なモノローグに合わせて夜の水上都市が映し出されていく。この時点でチンタラしていて「あ、ダメかも」と思ってしまった。
設定や世界観はフィリップ・K・ディックの原作クレジットがないのが不思議なほどのディック的世界観。
主人公がヒロインに惚れるのが一目惚れ。なんか歌に惹かれたとか言ってるけど、完全に一目惚れです。いくら顔がヒュー・ジャックマンとはいえ、おっさんが若い娘に一目惚れする姿を見せられたら「なんなんこのオッサン」と思わずにはいられない。一応、主人公がヒロインと付き合うように仕組まれていたことは後にわかるのだが(それも結構終盤の方で)、それまでは若い女に熱をあげたおっさんの暴走を延々と観せられるので、観客としては感情移入しづらい。
このように、この映画には雑な点が多々ある。数例を挙げると、
主人公の相棒のおばさんが雑に強い。(従軍経験あるとはいえ)ほぼ一人でマフィアを殲滅させてしまうのはやりすぎ。登場するタイミングも都合がよすぎると感じた。映画は創作されたものなので、劇中の出来事は全て都合よくできているのだが、それを踏まえた上であまりにも都合が「よすぎる」。つまり単純にへたくそ。
ヒロインが子供を助けるシーンも、「いや、母親が殺される前に出てこいよ」って思ってしまった。
終盤の元汚職警官との格闘シーンは無駄に長い。せっかくヒュー・ジャックマン主演だから入れとくか、って容易な発想が窺えた。
ヒロインの正体は最初は主人公に明かされず、主人公がヒロインを追っていくうちに徐々に判明していく。これは現代のSNSを通したコミュニケーションのメタファーだと思える。
水没しつつある世界という設定は映像的には映えていたが、ストーリー上では持て余していた印象。
伏線は綺麗に回収されていくが、なんか、そんなに驚かない。「あー」って感じで。小粒な伏線を淡々と回収していく。
似た作品としてプロデューサーの兄のノーランが監督した「インセプション」が思い浮かぶと思うが、あちらの映像のこだわり、設定のギミックの使い方とは雲泥の差がある。
ヒロインの正体が判明していく過程であったり、海面上昇による貧富の差の拡大、記憶潜入と過去等、観せたいテーマがあるのはなんとなくわかるが、どれも深く掘り下げられずに中途半端な形で出されてしまった印象が残った。
地味に今年観た映画の中では1番の駄作だったかもしれないが、頑張れば良作になれそうなポテンシャルは感じた。