「二人にとっての縁側は?が見えなかった」メタモルフォーゼの縁側 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
二人にとっての縁側は?が見えなかった
原作が好きで実写化には不安がありつつも鑑賞です。基本的にとっても良いお話ですし、うららと雪の距離感や空気感は十分に作品に落とし込めたんじゃないかなぁ?って思います。また全5巻の物語をよくまとめたなぁとも思います。
昨今の人間関係って昔に比べると気薄になってきたかなぁって思います。情報を共有することはできるけど、刺激し合うほどの関係性になることってなかなかないですよね。大体はテキスト文章のやり取りで終わっちゃう・・・要件で終わる仕事みたいな関係・・・。けど、それで生活が困るわけじゃないし、面倒な人付き合いを敬遠しがちになる気持ちもわからないでもないです。けど、やっぱり、人間関係って化学反応をもたらすことあるんですよねぇ。なぁんてことを考えると、この物語は現代のおとぎ話なのかもしれません。
人間関係ってそりゃぁ面倒臭いです。けど、ちょっと声をかけてみる、ちょっと相手のことを考えてみる、ちょっと誰かに歩み寄る、ほんのちょっと勇気を出してみる、それが人生をほんのちょいとだけど揺さぶるのではないでしょうか。揺さぶられたらきっと何かが変わっていくような気がしますし、素敵な何かが待っているんじゃぁないか?って思いたくなります。本作を見終わればなおさらですね。きっと僕らはそんな「ちょっと踏み出したら・・・」って場面を数多く味わってきているんじゃぁないかなぁ?
全体的に楽しめる作品なのではありますが、原作を知っているからこそ「?」って思うところがありまして。うららの性格が変わっている気がしました。BL好きを隠してはいますが、BLが好きであることを恥ずかしいとは思っていないはずです。雪さんとの最初のファミレスのシーンのうららの行動に違和感しかないんです。彼女は自分の「好き」に対して尻込みする子なんだと思うのです。原作にはBLを卑下する描写がないからさらに違和感です。この映画の作り手は「BL」というジャンルを「笑われるもの」って思っているんでしょうか?・・・なんか、リップク、リップクー!です。
それと、原作の最後の方でうららの大好きなセリフがありまして「縁側は〇〇みたいだ」ってセリフ。そう、彼女らにとっての縁側ってそうなんだよなぁって。だからこそ、本作の題名があるんだよなぁって思うほどの良いセリフです。そのセリフも、それを感じる描写がなかったので、残念ながら「二人にとっての縁側とは?」の部分がちょいと曖昧になっちゃった感があるのです。だからこそ、本作ラストのうららの気持ちがイマイチ不明瞭になってしまったような気がします。
あとは、愛菜ちゃん。やっぱり健全でポジティブなイメージが強すぎますね。すごく邪魔しちゃってるんですよね、いい子オーラが。「何にも話さないけど実はいい子」なうららではなり得なかったかなぁ。それも残念ポイントです。あ、全然別件ですが、愛菜ちゃんの俊足にびっくり。走り方がとっても綺麗で力強かった。