「「ずるい」」メタモルフォーゼの縁側 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
「ずるい」
このセリフに全てが集約されている。
これだけで私はこの映画を観て良かったと感じた。
特に何の取り柄もない「私」が、誰にも言わず机の奥にしまっていた数少ない楽しみさえ、あのコたちは瞬時に手軽なコミニュケーションツールにしてしまう。
ずるい。
「持たざる者たちの悲哀」
「でも、少しだけ、一歩だけ進んでみたら、ちょっとだけ違う景色が見えた」
まあ率直に言って、芦田愛菜ちゃん(やっぱり「ちゃん」だなぁ)自身は、ちっちゃい頃から紛れもないスターで、勉強もちゃんとできて有名進学校に進み、今も女性タレントのCMランキングでベスト3に入るほどの「数多くのものを手に入れた」タレントな訳で(もちろん現実のご本人にはご本人なりの苦悩や辛さがあるんだろうことは解った上で)、そんな人がどの口で「持たざる者」を語るのかという気持ちも無くはない。
でも、ちゃんと「持たざる者」に見えるからこそ、彼女は才能に溢れた女優なんだよな。
あのカッコ悪い走り方。
あれも彼女の役作りなワケでしょ。
たまらんなぁ。
…などと卑屈に浸っていてもしょうがない。
「老人と高校生の友情物語」と聞いて、当然最後は老人と死に別れる悲しい話だと思った私はとっても浅はか。
ちゃんと元気になれる良い映画。
(ここから少しネタバレ)
ただ、やっぱりみんな良い人過ぎるのが気になった。
だって、コミケのアレ、まずは怒っていいじゃん。
必死で準備したのに、当日アレじゃあさ。
もちろん不可抗力でしょうがないけど、それをうららちゃんが「自分が情けない」って泣く前に、「分かってるけどやっぱりムカつく」くらいの描写があってくれると、もっと親近感が持てたかも。
あと、マンガの登場人物に対してああいう感情の寄せ方をするのって、自分に経験がないので、二人がマンガの話をするシーンがウソ臭く感じてしまった。
ま、単に私がひねくれてるってだけですが。