「起と承が特にスゴイ」メタモルフォーゼの縁側 Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
起と承が特にスゴイ
2シーン目ぐらいで宮本信子と芦田愛菜が出会うんだけど、流れが自然ですごいね。それで、それぞれを描写して、また出会う。ここで芦田愛菜が『貸しましょうか』と言って一気に仲良くなるのかと思えば、それはフェイントで……って自然な流れがスゴイの。
やっとカフェで話ができたと思ったら、BLの恥ずかしさを、年の差で話をする恥ずかしさと誤解して、でも、それも解いてって流れもいい。
それで、芦田愛菜は、BLについて語れる相手ができてすごく喜ぶんだけど、それを、校舎内を走るシーンだけで表現するんだよね。うまい。
そこからも最小限の台詞で表現して良かったな。
物語が進んで「これは、芦田愛菜は、描くしかないだろ、マンガ」ってなって。『才能ない人はマンガ書いちゃいけないの』が勇気をくれるね。
それで芦田愛菜、作品を書き上げるんだよね。これがスゴイ。いきなり完成させた。
ここで『やったー!』と喜びを爆発させても良さそうだけど、『たのしかった』と呟くだけで、爆発と同じ効果を出してくるのもスゴイ。
コミケに行って出展できないのは『わかる』って感じだったな。冷静にみたら、周りのレベルと全然違うしね。でも「あんなに喜んでたのに」と気持ちを寄せちゃうね。買ってくれた幼なじみは偉い。それで宮本信子が『こんなに立派なマンガを創ってすごいじゃない』と締めてくれる。冷静に考えて、スゴイと思うよ。いきなりコミケに出せる作品を創ったって。
そのマンガの内容もいいね。そんなに面白い訳じゃないけど、初期衝動を感じる。縁側で食べるカレーは美味しいよね。
あと芦田愛菜のヲタクっぽい演技すごい。色んな芸能人がヲタク役をやるけど、みんなただ早口で蘊蓄をしゃべるだけなんだよね。キョドった感がない。
大体、芸能人なんてきらびやかな世界でやれる人たちで、ヲタクとは対極なんだよ。だから真似できる訳がない。
でも芦田愛菜はキョドってた。本好きだって言うし、陰キャ成分を持った人なんだろうな。
エンドロールを観てたら『脚本 岡田惠和』で、「これは、うまいの当たり前か」と思いました。
芦田愛菜も好きになったし、良い作品だと思うよ。