「1番遠い観客だと思われましたが、面白かったです」THE FIRST SLAM DUNK komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
1番遠い観客だと思われましたが、面白かったです
(ネタバレですので鑑賞後にお読み下さい)
個人的には、漫画「SLAM DUNK」も通ってないですし、バスケットボールにもほとんど興味がないので、観客としては1番遠い人間で、全く良い観客ではなかったとは思われます。
しかし結果的には大絶賛の周りの評価に違わない、大変面白い映画だと思われました。
勝手に自分の解釈に引き寄せて感想を書くと、
1.問題が解明されなければ人は救われない
2.現実で己の存在が実現証明されなければ人は救われない
との2つの考えがあると思われます。
情報過多の現在では、必然的に日々現実で起こっている様々な問題があらゆる角度から検証され解明されて行っていると思われます。
つまり、現在では前者の1「問題が解明されなければ人は救われない」を避けて作品を作るのはかなり困難だとは言えます。
ところがこの映画『THE FIRST SLAM DUNK』は、2「現実で己の存在が実現証明されなければ人は救われない」にある意味振り切った作品だと思われました。
もちろんこの映画での主人公・宮城リョータの家族関係や、他登場人物の人物背景もきちんんと描かれてはいます。
しかしあくまでそれは人物背景であって、彼ら彼女ら自身がそれぞれの内面の問題に言及し共有し解明することで内面の問題を解決することをこの映画は拒否しているとさえ言えます。
あくまで漫画「SLAM DUNK」の原作者で映画『THE FIRST SLAM DUNK』の井上雄彦監督は、2「現実で己の存在が実現証明されなければ人は救われない」との考えに振り切ってこの映画の表現をやり切っていたのだと思われました。
これが、情報過多であらゆる事が食い荒らされているかの如く様々言及解明されている現在に於いて、映画『THE FIRST SLAM DUNK』が作品として特異に存在している理由だと思われます。
あくまで自身にフォーカスしてやり切るこのような作品は、実は現在ではかなり困難だとも思えるのです。
私個人は、”漫画の絵がそのまま動き出せば理想なのに”、を歴代で初めて実現させた映画だとも思われました。
おそらく井上雄彦監督自身も、映画作りの中で己にフォーカスし続けて、漫画原作としての理想の作品実現としても完成に漕ぎ着けたのだと思われます。
己にフォーカスし続けている人達を、様々な場面で足を引っ掛けて無効化しようとしている情報過多の現在の中で、己にフォーカスし続けて良いんだという、井上雄彦監督による観客人々への応援歌にもなっているようにも思われました。
映画『THE FIRST SLAM DUNK』は現在に現れた特異で振り切った力ある作品だと思われました。
バスケットボールに何ら興味を持てない私としても、これは評価されるのは当たり前だと思われる理想の傑作だと思われました。