「認知証の介護は大変です(経験者は語る)」ファーザー Mr.C.B.2さんの映画レビュー(感想・評価)
認知証の介護は大変です(経験者は語る)
2021.6.2
結局、緊急事態宣言中の五月は映画を1本も見なかった。昨年もそうだったが、映画を観るのも習慣性があるから、しばらく観ない日が続くと映画を観に行く気力が中々起きない。ましてや、東京の映画館は休業要請でやっていないから、川を超えて他県まで遠征するのはさらにハードルが高い。
緊急事態宣言は延長されたが、映画館の休業要請が緩和されて、今日、キノシネマ立川高島屋S.C.でやっと「ファーザー」を観た。
凄い。映像だからああいった編集が出来るが、舞台では一体どう表現しているのだろう?監督は原作舞台の演出家で、映画初監督作品。
クレジットされているキャストは8人、ほぼ6人で話は進む(ここいらが舞台劇だな)。
私の93歳の母は認知症なので、映画の中には認知症あるあるが一杯ある。
オリビア・コールマンは、「女王陛下のお気に入り」で女王陛下を演じてアカデミー賞主演女優賞を受賞。嫌味な女王が、受賞式の時にとてもチャーミングな女性で登場してビックリした。今度の娘役は更に良い!アンソニー・ホプキンスは絶品だった。もう一度、観るか。
カメラは、ずっとアンソニーの視点では無い(それではホプキンス映らなくなるよ)。
アンソニーと映画を観ている観客を巻き込んでの作劇で、フラット内の微妙な違いを見落としているかも知れないから、もう一度観ようかと。少なくとも「テネット」よりも、もう一度観る価値はあると思う。
◎「ファーザー」2回目鑑賞 2021.7.1キノシネマ立川高島屋S.C.
最初にアンを窓越しに見送る所で、もうアンソニーの部屋が違う(カーテンも家具も違う)。台所のタイルの模様が変わる。台所に置いてあった(アンソニーがスイッチを入れる)ラジオはラストの施設のアンソニーの部屋の窓際に置いてある。妹の書いた絵の横に置いてあるものも変わる。いつも料理がチキンなのはアンソニーが好きだからだろう。
以下、認知症介護経験者は語る(長文につき、認知症に興味が無い方はスルーして下さい)。
「ファーザー」と認知証の理解の参考に。映画のネタバレを含みます。
12月で94歳になる私の母は、認知症である。3年前から介護施設に入っている。約10年前に発症した頃は認知証だと言うことが判らなかった。物忘れ以外は普通だったから。
最初に気が付いたのは自分で決めた父の退院の日を全く覚えていなかった事。病院に行ったら明日退院だと言うので焦った!1度目の脳梗塞は軽く、父は右脚を軽く引きずる位の後遺症だったため、頭はハッキリしていたので「退院の日を決めたのはお前じゃないか」と怒っていた。(アンソニーも時計の場所等、色々な事を忘れまくり)
次は料理が出来なくなった事。脳梗塞で入院して退院して来た父に買い物に行くと千代田寿司やトンカツ弁当や唐揚弁当等を買って来るようになり、料理をしなくなった(出来なくなっていた。週3日、実家へ通って介護をしていたので、気付くのが遅かった)。父は油っこい物が好きなので食べていたが、野菜等が少なく再度脳梗塞を発症する事になる。
父は3度目の脳梗塞で車椅子生活になって施設に入り、母は一人暮らしになり益々認知症が進む。出来ていた事が出来なくなる(映画でもアンソニーがかぶりのセーターを着られなくなるシーン有り、アンが着せてあげる)。
料理を手伝うと言う母に妻が簡単に出来るとキュウリの塩もみを頼んだら、母は大量の塩を入れてしまって食べられなかった。
母は、隣の駐車場料金徴収を代行し毎月十数万円を駐車場のオーナーの口座に銀行から振込んでいたが、1年以上振込みをせず(銀行には振込みに行っていたが振込みをせず(出来ず)帰って来ていたようだ)150万円超が未振込で、父の葬儀に来た隣地の地主に指摘され私が立替えて振込んだ。母は「1万や2万の金じゃないんだから、忘れる訳ないだろ」(本人は振込んだつもり)と言っていたが、タンスから封筒に入った万札が続々と発見され、私が立替えた150万円は回収する事が出来た。
私の実家は1階が駐車場で階段を上がった所に玄関があるが、母の頭の中ではいつからか裏にも階段がある事になっていて、「お前はあっちの階段から上がったのかい?」「は?」「あっちにも階段があるだろ」(そんなものは無いんだな、これが)「何処に階段があるの?」「こっちにあるだろ。あれ、無いね」翌日には、また、あっちに階段がある事になっている。
映画では、アンソニーが窓から外の様子を伺うシーンがあるが、母は家の前に立ち道行く人(特に子供)を見ていた。見ているだけなら良いのだが、そのうち歩き出して徘徊してしまう事がある。家の前から右に曲がり、4回右に曲がれば家の前に戻って来るが、何処かで右に曲がらず(後を付けた事があるので判った)真直ぐ進んで700m程先まで行って迷子になった事もある。いつも同じ場所で迷子になる訳ではないので、徘徊した時に探して連れ戻すのが大変である。
母は買い物に行く時に財布に万札を入れて行く。千何百何十何円が小銭で払えないので万札を出してお釣りを貰うのだ(そう言えば、この間TVで最近の子供はキャッシュレスで「お釣り」を知らないと言う事をやっていた)。千円札、一万円札を出しては小銭でお釣りをもらうので、財布が小銭でいっぱいになる。(認知症あるある)
映画でもアンソニーの食事が鳥料理ばかりだったが、認知症になると同じ物を毎日買う。昨日買った事を忘れて今日もまた買う。そして明日も。(認知症あるある)冷蔵庫にロースハムとらっきょうが17袋入っていた事があった。
そのうちに財布を持たず(忘れて)に買い物に行くようになった。買い物をして会計する際に財布が無い事に気付く。金を取って来るからと取り置きを頼んで家に帰って来るが、取り置きを頼んだ事を忘れてしまう。「先程のお取り置きはどうしますか?」と言う電話が店から掛かってきて、こっちが焦る。
買い物に行って帰ってこないから、迎えに行くと路上で会った時に「お前、お金持ってないかい?」と聞かれた。「何を買うの?」「何だっけ?」どこかの店で財布を持っていなくて取り置きを頼んだようだが、何処で何を買ったのかさえ覚えていないのでは対応のしようが無い。
近所のスーパーマーケットのサミットへ財布を持たずに買い物に行き、会計で財布を探しまくり、警察を呼ばれてパトカーで送られて帰って来たことがある。家に着くなり「オシッコ」とトイレに駆込み、警官が帰ってトイレから出てきて「何処からパトカーに乗って来たの?」に「パトカー!?私はパトカーなんて乗らないよ」数分前なのに覚えていなかった。
結局、夜(に限らない)の徘徊等がひどくなり、(3分と目を離すとどこかへ行ってしまうので)介護施設に入ってもらう事になる。
母が介護施設に入ってから面会に行くと「あら、あんた来たの?」私はいつからか「あんた」である。もう久しく名前で呼ばれていない。私の母は、今も元気だが認知症である。
こんばんは。介護経験拝読いたしました。私も仕事的に高齢者の方と関わることもあるので、家族で介護ってほんまに限界があるしこのままやと日本が崩壊するのでは?と危機感を感じます。同じ方が1日に何回もいらして前に来た記憶がないとか結構あります。今の日本は高齢社会で認知症罹患者数が減ることはないと思われるため、行政のサポートがほんまに必要やなと思います。どうか無理なさらずご自愛ください。
俺も認知症家族経験者ですが、どこの家族も大変ですよね。
パトカーの件も納得ですが、個人的にはタクシーに乗ってくる認知症の方がややこしくて、結局警察のご厄介になることで決着します。ひどかったのが2回ほどありました・・・なんだか他人事ではなくて悲しくなってきました。
色々と新薬も出てきてますが、やっぱり大切なのは早期発見ですよね。
「浜の朝日〜」に共感ありがとうございました。
「ファーザー」は観ていません。両親が認知症が始まるまでは高齢者の映画をたくさん観ていたのですが、いざ始まるともうそれどころではないし、せめて映画タイムを取るときには別世界に浸ってホッとしたくて。
ふた月まえに両親二人ともを「サ高住」に入れましたが、それでもまったく息が抜けない僕です。
元特別養護老人ホーム職員 きりん
こんばんは♪
後半のご両親のお話を読ませていただきました。お母様お元気で何よりですが、ご病気で徘徊されるのはご家族も大変ですし、危ないですね。でも、優しく根気よく親孝行でいらっしゃいますね。
お名前を思い出していただきたいですね。
こんばんは
労作ですね。根気に脱帽です。
アンソニーの記憶、観客(私)に見せる映像。
トリックのようでしたね。
アンの台所なのか?アンソニーの台所なのか?
壁の絵、慣れた仕草で入れる紅茶とか、本当に惑わされました。
Mr.C.B.2さんも、そこに注目してらっしゃいますが、
本当に認知症の視点から描かれた作品でしたね。
ポプキンズさんの演技も凄かったですけれど、
本当に驚かされました。