「アンソニー・ホプキンス無双が堪能出来る、圧巻の作品です。」ファーザー 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
アンソニー・ホプキンス無双が堪能出来る、圧巻の作品です。
前から気になっていた作品を鑑賞しました。
緊急事態宣言の都内では2館のみの上映との事で渋谷の「Bunkamuraル・シネマ」で鑑賞。
平日にも関わらず、その日の上映回分のチケットは全て完売との盛況ぶり。
で、感想はと言うと、凄い。凄いね。
圧巻のアンソニー・ホプキンスの演技力に圧倒された。
まさしくアンソニー・ホプキンス無双w
アンは高齢になった父親のアンソニーに認知症の兆候が見え始めたのを心配し、ヘルパーを付けようとしたが気難しいアンソニーは難癖を付けてはヘルパーを追い出す始末。しかし、アンソニーの病状は悪化の一途を辿り、記憶が失われていくだけではなく、自らが置かれた状況すら把握できなくなっていった。
今まで居た者が、今まであった物が突然消え、また現れる…。困惑するばかりのアンソニーは苛立ちを募らせ、アンはそんな父親を懸命に支えていたが、気力と体力は消耗するばかりであった…
と言うのが大まかなあらすじ。
高齢の父親、アンソニーと娘のアンが主軸となり、登場する人物もごく少数で構成されていて、それぞれに当たるウェイトが非常に高く重い。
特にアンソニー・ホプキンスがほぼ出ずっぱりで役柄が物凄く難しく、並みの役者では演じきれないと言うのは素人目にも分かる程難解。
日常の普遍的な事を不変にしながらも変えていくと言う、微妙な心理描写の流れが細かい。
アンソニー・ホプキンスが名優であると言うのは今更ながらですが、この作品で2度目の「アカデミー賞」の主演男優賞を受賞したと言うのも頷けます。
(個人的に今回のアカデミー主演男優賞はアンソニー・ホプキンス押しでしたが、作品を観ていなかったので一抹の不安はありましたが、作品を鑑賞して改めて納得。)
アンソニーの目の前に様々に現れる人物達の行動と言動に「これが本当なのか?嘘なのか?」と戸惑い、何処かで「これが全員がよってたかってアンソニーを騙している演技だと良いのに」とか、実はファンタジーとかタイムリープとかだったら良いのにと思ってしまう。
これを現実とし、受け止めるにはあまりにも辛い。
その思いが淡々と切なくも徐々に実感としていく。
まるで真綿で首を絞められる様な現実を認識していくのが辛いんですよね。
まるでサスペンスホラーな感じで、でもサスペンスホラーだったら、もしかしたらその方が救いがあるかも?と感じてしまう。
ラストのアンソニーの泣き崩れる演技にはこみ上げる物があります。
また、他の演者達も流石の一言で、アン役のオリヴィア・コールマンは勿論ですが、個人的には男性役のマーク・ゲイティスが何処か作品をミステリアスに感じさせるのが良いんですよね♪
認知症と言う、他人事ではなく、家族にも自分自身にもいつかは訪れるかもしれない恐怖と不安に怯えるのはとても分かるし、またそれが実は実感の無いまま自身がそうなっていると言うのは切なすぎる。
時間と記憶が混迷しながらも、曖昧になった現実が徐々に答えとして導き出され、またアンソニーのいろんな喜怒哀楽がより観る側に突き刺さるんですよね。
個人的には重くどっしりと感じで、「ノマドランド」や「ミナリ」と並べてもアカデミー作品賞のノミネート作としては遜色がないが、エンターテイメント性は皆無なので観る側にある程度の覚悟が必要。
でも、アンソニー・ホプキンスの圧巻の演技は唯一無二なので映画好きなら観る価値はアリアリだし、かなりネタバレが厳禁な作品。
静かにゆっくりと突きつけられる現実の重さに作品の良質を感じられます。
重い作品ではありますが、名優の演技をたっぷりと堪能出来るお勧めの作品です。
是非是非!