「認知症は、本人にとってミステリー」ファーザー bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
認知症は、本人にとってミステリー
認知症をテーマにした作品は、これまでたくさんあったと思う。しかし、それらは常に、家族や第三者からの視線で描かれており、今回の様に、認知症となった本人の視線になっている作品は少ない。都合の良い思い出に書き換えることで、現実とは食い違う記憶やその都度、忘れていく現実を描いている作品は、斬新と言える。
ストーリーは、自分が認知症とは気づかずに、これまで通りの生活をしようとする父・アンソニーと仕事を抱え、夫からの厳しい態度に疲れ果てながらも、懸命に介護をする娘・アンとのヒューマンドラマ。しかし、認知症を患った父にとって、死んだ娘のことも生きていると信じ、娘の夫や介護士の顔も刻々と忘れていく日々は、全ての出来事がミステリーであり、不安そのものであったろう。そんなアンソニーの不安が、リアルに伝わり、怖ささえ感じる。
自分の父も一昨年他界したが、晩年は認知症を患い、母も手を焼いた。
自分の思い通りにならないと、母に声を荒げる。
外出する時は、ジャケットにエナメル靴を履きダンディーを装う。
施設に入ってからは、自分がなぜここにいるのか理解できず、母を探した。
そんな父とアンソニーの描写があまりにも似ていて、自分の父親を観ているようだった。自分も還暦を過ぎで、次第に物忘れも気になり始め、いつかそうなる日が訪れるのかと思うと、不安になってくる。
主演のアンソニー・ホプキンスは、今年のアカデミー賞で、前評判の高かった、昨年亡くなったチャドウィック・ポーズマンを抑えて、この作品で主演男優賞を受賞したが、この作品を観てそれも納得した。特に、ラストシーンの赤ちゃん返りして、「ママー」と嘆くシーンは、人の原点回帰を、まざまざに見せつけてくれた。役名が『アンソニー』というのも、製作のウィットに富んだ設定であると感じた。
但し、アンソニー・ホプキンスは、これだけの名演技と台詞を覚えたのだから、今後も認知症に陥ることなく、これからも私たちを楽しませてくれる演技を見せてくれると期待できる。
こんにちは。
確かにアンソニーは膨大な台詞の量でしたね。
認知症と言うよりは統合失調的でもあった様な気もしてます。
でも、だんだん自分に起きている事がわからなくなる‥そういう意味で怖いですよね。
カールⅢ世さん(^^)コメントありがとうございます😊
でも、父も入院中に、看護師さんが部屋を覗いている、と言って困らせた事もありましたよ。
自分も、そうならないように今から気をつけなくては😉
つらい映画でした。bunmei21さんのお父さん、でもなかなかカッコいいじゃありませんか。お母さん(奥さん)を探す。それはそれで、いいなぁと思いましたよ。物盗られ妄想の強い人は施設からも拒絶することが多いので、大変です。親切なヘルパーさんに限って何人もクビにして、とても困りました。