劇場公開日 2021年5月14日

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「認知症の父を介護していた頃を思い出す」ファーザー shoheiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0認知症の父を介護していた頃を思い出す

2021年5月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今年のアカデミー賞で下馬評を覆して、84歳の名優アンソニー・ホプキンスが主演男優賞を受賞した作品。アンソニー・ホプキンスは痴呆症の兆候が出ている老人を演じているのだが、この描き方が画期的である。
ストーリーを追っかけようとして観ていると、どうしても混乱してしまう。物語の時系列、状況設定、登場人物の正体や発言などの辻褄が合わないからだ。 つまり、認知症で混乱しているアンソニー(役柄も同じ名前)の視点で物語が描かれているからだ。観ている側も不安を感じてしまう。またアンソニー自身も機嫌よく話していたと思ったら、突然猜疑心から周りの人物に当たり散らしてしまう情緒の不安定さが描かれている。これは認知症の不安を描くにあたって、非常に優れた手法だと思う。
私の父も晩年に認知症を患ってしまい、ショッキングで悲しい思いをしたことがたびたびある。周りの人の手助けによって、何とか乗り切ったけれど、徘徊や行方不明もあり、本当にあの時期は生きた心地がしなかった。だけれど、認知症を患っていた父は我々よりももっと不安だったわけだ。結局我々も父を特養老人ホームに入れたのだが、そこでも不安だったろうなと思う。映画を観ながら色々なことを思い出して、目頭が熱くなった。

shohei1484