「背後」ファーザー ONAKAMAさんの映画レビュー(感想・評価)
背後
「ノマドランド」や「ミナリ」と今年のアカデミー賞受賞作品は自分にはあまりハマらず、アカデミー賞ってこんなもんだっけ?と思っていた中で、当初は観る予定の無かった今作。はっきり言ってしまうのはアレなんですが、認知症は当人に自覚は無いし、関わる人物はイライラしてしまう、それが観客側にも伝わって楽しめないのではないかと思っていました。
観に行こうと思ったきっかけはYouTubeで動画投稿をされている茶一郎さんの生放送で語られた今作が「怖い」という一言だけで観に行く気になりました。
そんな中観た今作、今までで観たことない作品でした。認知症の人物を客観的に描くのかなと思ったのですが、主人公・アンソニーの主観的に描かれるという斬新なスタイルにまず驚きました。
物語は殆ど"家"の中で描かれます。あまり動きがない今作ですが、「TENET」ばりに混乱させられました。アンソニー視点で物語が進むのでどれが間違いで、どれが正しいのかが分からず行ったり来たりを繰り返します。でも物語からに惹きつけられているので、こんな楽しい映画の後戻りは許されませんでした。
アンソニーが突然頑固親父からコミカル親父になった瞬間笑ってしまいました。演技とはいえ人が全然違うじゃないか!とアンソニー・ホプキンスの演技力に圧倒されました。
ラストで明かされるアンソニーは最初から老人ホームにおり、そこまでの物語が全て幻想ということが明かされます。薄々そんな感じじゃないかなとは思っていましたが、いざ明かされると悲しい気持ちになります。将来自分がこうなるのではないか…という恐怖にも細悩まれました。
人生というものを考えさせてくれる映画でした。とても面白かったです。
鑑賞日 5/17
鑑賞時間 17:10〜18:55
座席 G-13