「施設の介護士に聖母をみた」ファーザー momokichiさんの映画レビュー(感想・評価)
施設の介護士に聖母をみた
「葉が一枚づつなくなっていくようだ。」
自分が見えているもの、認識してていることが、どうやら真実はそうではないみたいだ。
正気の時がどんどん少なくなり、妄想と記憶が錯綜する状態が支配する。今にもまったく認知できなくなって消えてしまうかもしれない。
「自分を失う恐怖」が克明に描かれる。
完全に呆けるのでなく、まだかろうじて自分を客観視できるという状態は、恐怖である。
これが長く生きるようになった人間に対する罰なのだとしたら、あまりに酷である。
アンソニー・ホプキンスの演技は演技を超えている。 老人の男の偏屈、虚勢、恐怖、慟哭を、過剰な演技的なもの一切なしに自然なままに演じている。
認知症はそれを支える家族にとっても残酷である。献身的に介護する娘に対する酷い仕打ちには泣きそうになる。旦那がああ言いたくなるのも分かる。 (妄想じゃないよね?この場面。)
最後の施設の介護士の対応に救われる。
目をそらさず、バカにせず、誠実に向き合い、最後は抱擁する。
なんと慈愛に満ちた仕事なのだろうか。
今晩は
お褒めのお言葉、素直にうれしいです。
momokichiさんが仰るように、それまで尊大な態度を取っていたアンソニーが、自分の存在意義も信じられなくなり、泣きながら”私は誰なんだ・・、ママ・・”と言うシーンには哀しいですが、琴線を揺さぶられました。
”アンソニー・ホプキンスの演技は演技を超えている。 老人の男の偏屈、虚勢、恐怖、慟哭を、過剰な演技的なもの一切なしに自然なままに演じている。”
このお言葉も心に沁みましたし、同じことを考えながら観ていました。
これからも、宜しくお願いいたします。