「ある意味ではホラー」ファーザー コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
ある意味ではホラー
怖かった〜
世に認知症の老人を描いた映画はたくさんあったけれども、本作は認知症になった老人からの視点がメインなんですね。
だから記憶の混同、混濁、事実誤認が数分おきで起きてしまう。
全員が嘘つきなんじゃないか?真実っていったい何なんだ?と、主人公のアンソニーの立場になっても、そして映画を観てる人間にとっても混乱を招きます。
しかもシーンがメインである主観から、娘や介助士側や、第三者のいわゆる「神の視点」の客観にところどころ変わることがある。
これによって、常に「何が正しいかわからない」という状況に落とされました。
この「足場のなさ」が、一種のホラーみたいに感じました。
しかも、認知症老人にとっては「私の言うことは絶対なんだ、正しいんだ」という激しい思い込みがあり、それを否定されると攻撃的になる、実に厄介な状態。
で、映画を観てる最中は、アンソニー・ホプキンスの怪演に夢中になっているのですけれども……
観終わると違う恐怖が起きました。
ひょっとして、歩行者のいる歩道に車で突っ込み、アクセル踏みっぱなしで事故を起こしたのに「ブレーキを踏んだのにかかわらず加速した」と主張する老人とかって。
彼らにとっては、その主張は「正しい」んだ。
主観ではそれしか「真実」じゃないんだ。
そういう脳の構造なんだ。
うわぁぁぁぁぁ、怖えぇ。
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