「すっごい映画でした。納得の主演男優賞」ファーザー 星月夜さんの映画レビュー(感想・評価)
すっごい映画でした。納得の主演男優賞
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日本でも認知症の父親とその家族を描く人間ドラマは制作されている。
例えば中野量太監督の「長いお別れ」は山崎努さんが演じる認知症の父親を見守っていく家族の姿を描いてた。
介護する家族側の視点からみた映画はみたことがあるけれど、本人側の視点から描いた映画をみるのは私は初めてで引き込まれた。
映画が始まるといきなり味わうモヤモヤした違和感。
アンソニーと娘アンのチグハグな会話やいきなり現れる見知らぬ男。
誰が誰だか、ここは何処だか、何が何だか分からない。
父親の視点から描くことで認知症を観客に擬似体験さていく脚本。
繰り返されるのは…時計はどこか、ここはどこか、キミは誰か、パリでは英語を喋らない、記憶と時間の混迷を表すのだろう。
現実と幻想の境界が曖昧になっていくアンソニーは過去へ幼い頃へと向かっている気がした。
認知症のゴールは退行現象なのだろう。
描かない彼のラストは母親のお腹に帰るということなのかもしれない。
…そう言いながら他人事じゃない。
自分がアンの立場やアンソニーの立場に立つ日が来るかもしれない未来を考えながら劇場を出た。
女王陛下じゃないオリビア・コールマンの好演。
そして名優アンソニー・ホプキンスが名優たる理由がよくわかった映画。
どうしても羊たちのイメージが強かったのだけれど本作の演技も拍手もの。
納得のアカデミー賞主演男優賞!
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