「全人類必見の一作」ファーザー takfさんの映画レビュー(感想・評価)
全人類必見の一作
この映画を観たうえで、どうすれば最優秀主演男優賞がチャドウィック・ボーズマン一択と勘違いできるのだろうか。
今年のアカデミー賞授賞式における演出の無能っぷりを再確認させられた。
とはいえ、妥当と言える選出が行なわれたことは喜ばしいことである。
さらに言えば、最優秀作品賞も本作で良かったのではないかと思えるほどの傑作であった。
本作は認知症の症状が主観視点で描かれる。
緻密かつ巧みな演出により、観ている側は文字通り認知症を擬似体験させられ、その恐怖や孤独感を生々しく実感することになる。
深い絶望の果てに誰もが思うのは「この先どう生きればいいのか?」
そこについてもこの映画はひとつの答えを美しく映し出して終わる。
重々しいテーマであるものの、単なるサスペンスにとどまらず、「未知なる世界の体験」という意味で優れたエンタメ作品として仕上がっており全く飽きることは無い。
この体験は、「今直面している人」はもちろん、いずれ当事者となるかもしれないすべての人々にとって、多少なりとも「理解」と「救い」になるはずである。
マ レイニーのブラックボトム観ました。チャドウィックボーズマンの演技は最高で、主演男優賞を獲るだろうと思っていたら外れました。ファーザーを観て、アンソニーホプキンスの主演男優賞に納得しました。ほとんど出ずっぱりで話しっぱなし、すごい演技力。本当に認知症の老人のようでした。
観客も途中から何が現実か分からなくなるのが新しい演出で、認知症の人の混乱が実感できました。
iwaozさん
コメントありがとうございます。
仰る通り恐ろしいことですが、この映画に触れることで、「分からない」という恐怖から少しは解放されるのではないかと思いました。
ラストシーンからは、どうしようもないことを嘆くより、目の前にある美しいものを美しいと感じられるだけで素晴らしい、そんな普遍的なメッセージが込められているようで勇気をもらえました。
正しく認知症の方と接する方、これから接するであろう方、
(って、ほとんど全ての人が当てはまると思いますが)
は、ぜひ見ておくべき映画ですよね。
記憶が繋がらないって、どれほど恐ろしい事なのか、気が狂ってもおかしくないですね。(T . T)