劇場公開日 2021年5月14日

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「【”全ての葉を失っていく・・。私は誰なんだ・・、ママ・・。”稀代の名優、アンソニー・ホプキンスが自らの進行する認知症に気付かない男を演じる哀切極まりない姿と、斬新な作品構成、脚本に唸らされた作品。】」ファーザー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【”全ての葉を失っていく・・。私は誰なんだ・・、ママ・・。”稀代の名優、アンソニー・ホプキンスが自らの進行する認知症に気付かない男を演じる哀切極まりない姿と、斬新な作品構成、脚本に唸らされた作品。】

2021年5月15日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

難しい

◆アンソニー・ホプキンスが、アカデミー賞を獲った事は僥倖だが、その事実に引っ張られずに観よう、と思いながら鑑賞。

ー 今作の主人公アンソニー(アンソニー・ホプキンス)は、調子が良い時には
 ”私は、非常に知的だ”と恥じらいもなく、口にする男である。
 確かに、インテリジェンスを感じるシークエンスが、前半では随所で短いショットで映される。
 だが、認知症は密やかに、彼の知的な脳を侵食していく・・。ー

■今作の優れている点

1.室内劇と言っても良いほど、物語は”様々な”室内で進行していく。
 但し、この物語は認知症が進行しているアンソニー目線で描かれているので、観る側は、キチンと見ていないと混乱する。
 ー だが、その作品構成、プロットが非常に優れている事に、観ている側は徐々に気付かされるのである。ー

2.アンソニーは”最初”に描かれるシーンで、住んでいるアパートメントを”ここは私の部屋”と何度も言う。
 ー だが、ショットが頻繁に切り替わる事に、アパートメント内(特に印象的なのは、玄関に通じる廊下である。)の雰囲気が微妙に変わっている。ー

3.アンソニーの娘アン(オリヴィア・コールマン)は、父の介護係を手配しているが、父の気に入らず頻繁に変えている。
 アンは近々恋人が暮らすパリに移住するために、新しい介護係ローラ(イモージェン・ブーツ)を手配すると、アンソニーは彼女に末娘の面影を見出し、親し気に話すが、態度が徐々に不安定になっていく・・。
 ー ここでの、アンソニーの”英語も喋らない連中が住んでいる場所に行くなんて・・”と何度も言うシーンと、アンへの侮蔑の言葉とアンの妹ルーシーを褒め称える言葉の数々。
 後半明かされる哀しき過去に起きた事故との関連性を、この時点で暗に描いている巧みさ・・。
 そして、健気に父の面倒を見るアンの哀し気な瞳。ー

4.アンの夫ポールだという見知らぬ男(マーク・ゲイティス:この俳優を見ると、”英国を舞台にした映画だなあ・・”と思ってしまう。)が、自分の居間のソファに座っていたり、同じくアンの夫ポール(ルーファス・シーベル)だという男からは、”貴方は、私をイラつかせる・・”と叱責され、もう一人のポールからは2度、頬を引っぱたかれるアンソニー。
 怯えるアンソニー。
 そこには、序盤の尊大とも言えるアンソニーの姿はない・・。ー

<最後半、謎の男や女の正体が分かり、アンソニーが
 ”自分が置かれた状態を正確に把握しきれない中”、そして
 ”現実と彼の妄想が入り混じった中”
 真実が明らかになった時のアンソニーを演じる、アンソニー・ホプキンスが涙を流しながら
 ”私は誰なんだ・・。ママ・・。”
 と口にするシーンには、
 ”人間は、女性から産まれ、育ち、知識を得て、ある程度の地位まで達したとしても、認知症に侵されてしまうと、幼子の様になっていくのか・・”
 という哀しき現実と、それを体現するアンソニー・ホプキンスという稀代の名優の、哀切極まりない演技に魅入られた作品である。

 きっと、認知症の方を看護した経験のある方は、今作の観方が大きく違ってくるのであろうな・・、と思った作品でもある。>

NOBU
asicaさんのコメント
2022年12月7日

もう1人は実際は施設の医者(?)で、アンの顔ではないアンは施設の介護士さんだったわけで時間軸に関してはもはや全体のエピソードを順不同で羅列してある、と柔軟な目線で見られたのは良かった気がしています。
私の父の場合は一体どうだったのか、想像するのが無理なくらいの暗闇だったのでは?と思うに付けても 実はこの作品については差程の恐怖に思えなかった程です。コメントでは語れない内容で

asica
asicaさんのコメント
2022年12月7日

こんにちは

今 とりあえず期間限定的に忙しくしておりまして「お返事不要」とのお言葉に甘えておりました。
みなさんの「時間軸の理解が困難」と言うのと視点が認知症老人であるとの前知識を持ってしまっての覚悟の視聴だったので これはこれで落ち着いて見る事が出来た気がしています。
出て来る夫は1人は既に離婚しており

asica
しろくろぱんださんのコメント
2022年11月16日

観賞している🎬はNOBU さんの方が断然おおかったです。
…失礼しました。すみません🙏

しろくろぱんだ
しろくろぱんださんのコメント
2022年11月16日

数多くのレビューからいくつもの共感ありがとうございます。🙇
自分でも多くて見直せなくなりました。

しろくろぱんだ
琥珀糖さんのコメント
2022年9月19日

おはようございます。
共感ありがとうございます。
何度も目を凝らしてみたのですが、私の方が混乱してしまいました。
アンの家とアンソニーの家の区別が付き難い、台所もそうでした。
もしかしたらアンソニーは介護人をアンの夫たちと混乱してたのでしょうか。

琥珀糖
masamiさんのコメント
2021年5月21日

NOBU様コメントありがとうございます😸
実は怒った事は反省しています。
では、どうすれば良かったのか・・三列前の人には怒れませんし・・・
最近は上映中にケータイを使う人はいません。あれだけ言ってれば・・・
月曜日にあの映画に行く予定。
アリス?かな?

masami
masamiさんのコメント
2021年5月19日

NOBU様コメントありがとうございます😸
さっき観て今帰宅したところです。
シリアスな展開ですがユーモアもありました。
アンソニー・ホプキンスの役名がアンソニーですか。
感想は近日中にアップしますね。

masami
momokichiさんのコメント
2021年5月17日

”人間は、女性から産まれ、育ち、ある程度の地位まで達したとしても、認知症に侵されてしまうと、幼子の様になっていくのか・・”

素晴らしい。。まさに私もこれを感じました。
うまく表現できなかったのですが、的確に言語化していただき感謝です!

momokichi
アンディぴっとさんのコメント
2021年5月15日

NOBUさん、コメント返していただくのに何処に返していいかわからないですよね、大変苦労おかけしました。ぼちぼち新しいレビュー書き込めると思います。
でも実は濃厚接触者ということで映画館に行けない😭体調には気をつけてくださいね!

アンディぴっと
アンディぴっとさんのコメント
2021年5月15日

今晩は!今作は観た方が良さそうな映画ですね!
自分もいつかはそうなってしまうかもしれないし😔
ユナイテッド豊橋、地方都市ゆえ混まないのは助かりますね、密の心配いらないしね😁

アンディぴっと