劇場公開日 2022年3月25日

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「オートクチュールを支えるお針子さんたちにフォーカス」オートクチュール 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5オートクチュールを支えるお針子さんたちにフォーカス

2022年3月26日
PCから投稿

泣ける

パリの老舗メゾン、Diorのアトリエで、デザイナーから渡されたデザイン画を服にしていく裁縫担当者、俗にいうお針子にフォーカスする本作。この視点は珍しいかも知れない。大女優、ナタリー・バイが演じる引退を控えたベテランのお針子、エステルが、ある事件をきっかけに出会ったバンリューに住む移民2世の少女、ジャドに、自分の技術を託そうとする。

オートクチュールの世界は煌びやかだが、その影では名もなきお針子たちが情熱とプライドを服作りに捧げている。エステルとジャドのまるで母親と娘のような関係はドラマチックだけれど、筆者はフランスの伝統文化が著名なデザイナーの下で働く現場の労働者によって支えられていることを描いた点こそ評価されるべきだと感じた。

勿論、デザイナーたちもそれを知っている。ユベール・ド・ジバンシィのファイナル・コレクションでは、モデルではなく、お馴染みの白衣を羽織った大勢のお針子たちがランウェイに上がって、ジバンシィと同じ拍手喝采を浴びた。この映画を見て、あの感動が久々に蘇ったのだった。

清藤秀人