劇場公開日 2021年3月12日

  • 予告編を見る

「臨場感はあるけど」アウトポスト キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0臨場感はあるけど

2021年3月25日
Androidアプリから投稿

そもそも戦争映画のカテゴリーは苦手なので、この★の数でフラットに評価はできていないと思う。

まず、それぞれ役ごとのキャラクター付けはされてるっぽいんだけど、ヘルメット被られてホコリだらけでは、兵士の顔の区別がつかなかった。
で、結局最後まで私にはほとんどの登場人物が同じ人の様に見えていた。そのあたりも感情移入しにくかった要因かも。

エンドロールでは、実在した戦死者達それぞれに、享年(ほぼ20代前半)と、贈られた勲位が示される。

私はむしろこれを「勲章贈られたって彼らは戻らないのに…」という皮肉めいた表現だと思って席を立とうと思ったら、さにあらず。

その後に差し込まれた、帰還兵達のインタビューを聞くと、この作り手はかなり真正面から彼らを讃える映画にしたいんだなという事が伝わってきてしまう。

もちろん命を掛けて任務を果たそうとし、仲間を守ろうとした兵士達の功績は讃えられていい。ただ、やっぱりそれが「お国のため」として正当化されるのはすんなり飲み込めない。

念の為言うと、本編の内容は決して悪くない。
彼ら兵士達が1日でも早く任務を終え、愛する者達の元へ帰りたいと願っていることも描かれ、映画の前半は日常と異常が隣り合う怖さ、派遣される上官に振り回される部下の戸惑い、後半45分は、ずっと臨場感溢れる戦場の怖さが伝わってくる。

でも、やっぱり現地のイスラム教徒たちやタリバンは「コミュニケーション不能のエイリアン」として描かれているし、米兵は怪我一つで救護班だけでなく総員フル稼働の大騒ぎなのに、敵兵は銃弾一発で簡単に絶命・退場する(様に見える)存在。少なくとも彼らの命とアメリカ兵の命は等価に表現されてはいない。

「アメリカ礼賛映画」とまで言うつもりはないけど、反戦という観点から考えると「殺し合うことの愚かさ」ではなく「米兵の命の重さ」が偏重されていて、簡単に「いい映画でした」とは言えないなぁ、というのが率直な感想。

15

キレンジャー