少年の君のレビュー・感想・評価
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鑑賞前と鑑賞後で、題名の捉え方が変わる一作。
本作には、物語の流れや映像の雰囲気などに、どこか岩井俊二監督を思わせるところがあるけど、それも当然で、デレク・ツァン監督は岩井監督の影響を半ば公言しています。ツァン監督の『ソウルメイト』(2016)では、エンドロールに岩井監督の名前も刻まれているとのこと。だが当然、ツァン監督が、単に敬愛する映画監督の作風を模倣したり引用するといった段階に留まるはずはなく、見事な語り口と映像美で独自の作品世界を作り上げています。
本作はそんなツァン監督の作家性が如何なく発揮されており、物語の核は典型的なボーイ・ミーツ・ガールでありつつも、いじめや苛烈な受験など、現代的な諸問題を取り入れて、現代中国の映画として見事にアップデートしています。もし、あくまで彼らの目線に寄り添って物語を編んでいけば、レオス・カラックス作品のような、熱情と狂気のままに突き進む男女の物語となっていたでしょうが、本作では、彼らに立ちはだかる「社会」や「権威」すらも単なる敵としてではなく、緻密かつ冷厳と描いています。作中に登場する二人の捜査官はそれらを具現化した存在で、彼らが語る正論や主人公二人に発する言葉の一見温かみのある言葉が、実は誰に向かって発せられていたのか、それが明らかになったときにはなかなかに慄然とさせられます。題名は青春映画としての本作の一面を端的に言い表しているのですが、鑑賞中にこの言葉が発せられた状況を知ると、また別の意味が浮かび上がってくるという点でも、みごとです。
苛烈な受験やその渦中で人間性を失っていく学生達、そして圧倒的な経済格差がさらなる学歴格差を生み出していく悪循環など、本作では現代中国の様々な社会問題を取り上げていますが、さすがに正面切っての批判は難しかったのか、その社会的病巣にはあまり切り込まず、不良学生一人に全ての不条理と悪意を押しつけている感がありました。この点だけが残念。
胸が締め付けられる
熾烈な受験競争、いじめ、経済格差、置かれた環境の違い、中国の抱える社会問題etc...
現代の中国事情を若者の目線で描く物語。
どうしようもない孤独の中で出会ってしまった若い男女の、一言では表せない複雑な想いで繋がった強い恋愛の絆に、胸が強く締め付けられた。大人になり若い頃のこんな純粋な気持ちを忘れてしまった自分に気づくとともにそれを思い起こさせてくれたこの映画に、久しぶりに感情移入して胸が掻き立てられました。
切なくも激しく哀しい純愛映画、余韻が残りました。
タイトルなし
現在の日本も、いじめる側の人間が社会人になってからも得するような世界のままだと感じています。
いじめる側の人間は社会的に抹殺される世界にしたい。してほしい。全世界で!いじめるなって言っても奴ら変わらない変わる気ない自覚ないんだから。
この作品、うまく作ってある。二人の強いつながりと思いやりあいがとても切ない。
「白夜行」を思い出した
純愛、絆、一筋の光、
でもテーマは重い重い…イジメ問題。
イジメ当事者はこの映画見るだろうか、見て救われる人がいてくれたら、と願うばかり。
「プロミシングヤングウーマン」でも感じた《知っていながら見て見ぬふりする人々》自分だったらどうするだろう、この第3者の立場になる事が多い私。学生の時どうだっただろう…知らんぷりしたよな?自分。「間違っている」と声をあげる人でありたいと強く強く思う。
ずっしりと重いのに清々しい、『ぼくのエリ』のように美しく血塗れな青春譚
主人公は大学受験を控えた高校生のチェン・ニェン。彼女が通う高校は皆参考書が山積された机で一心不乱に勉強する超進学校。ある日同級生フー・シャオディエが飛び降り自殺をしてしまう。チェン・ニェンは彼女が虐めに遭っていたことを知っていたのに他のクラスメイト同様見て見ぬふりをしていたことを悔いるが、今度はチェン・ニェンが虐めの標的となってしまう。絶望的な日々を送っていた時、ある少年が集団リンチに遭っているところを目撃する。とっさの判断で救った少年の名前はシャオベイ、母親に捨てられた孤独なチンピラだがチェン・ニェンへの借りを返すために下校時のボディガードを買って出る。優等生とチンピラという全く異質な二人だったが放課後を一緒に過ごしているうちにお互い強く惹かれ合うようになっていく。しかし受験が近づくにつれてチェン・ニェンに対する虐めが激しくなり、毅然とした態度で立ち向かおうとしたチェン・ニェンの身に凄惨な報復が忍び寄ってきていた。
まず受験戦争の激しさが強烈。担任が軍曹のように学生の上に君臨し、大声でアジる。実際受験生達は進学先が人生を決めてしまうので心のどこにも余裕がなく、その精神の歪みは容易に凄惨な虐めを生み出すが、虐められている同級生に対して同情することもない。そんな絶望が横たわっているので、フー・シャオディエが自殺する前にチェン・ニェンにこぼした疑問詞がとてつもなく重い。最下層に暮らす弱者であるチェン・ニェンとシャオベイはそれぞれの手段で前向きに生きようとするが彼らを捻り潰そうとするように様々な苦難が訪れ、彼らが遂に社会に向けて牙を剥く瞬間の切なさが胸に突き刺さります。孤独な二人が力づくで未来を切り開こうとする様はスウェーデンの吸血鬼映画『ぼくのエリ』のような観る人によってバッドエンドにもハッピーエンドにも見えるもの、取ってつけたようなエンドロールがその無情さを微かに煽ります。チェン・ニェンを演じるチョウ・ドンユィの今にも消えてしまうそうな透明感と、シャオベイを演じるイー・ヤンチェンシーが全身から醸し出す痛々しい純粋さが印象的。ずっしりと重いのに鼻の奥がスッとするような清々しさも感じる血塗れの青春譚です。
官僚指導的青春哀愁電影
まず重慶の街が凄い!高層建築と地下都市が合体した威容な風景に圧倒される。現代中国に生きる市井の人々怒りや悲しみは世界共通だ。何気ない通勤通学や高校、雨の受験日のシーンが良い。主演の2人が良い。圧倒的な画面に負けずストーリーをぐいぐい引っ張って行く正に映画スターの存在感。最初と最後のテロップに中国とゆうか習近平指導部の中華人民共和国における表現の自由とまでは言わないが口ごもるトホホな感じを他の映画でもたまに感じる。長江哀歌や芳華ユースの時も思ったが一度は各シネコンの一番大きいスクリーンで観てみたい。
チョウ・ドンユイいいわ〜
中国と日本の状況が違いすぎて(中国が苛烈すぎる!)ほぼ作品に入れないまま終わっちゃった… 高考てここまでやるんか…あれイジメじゃなくて普通に犯罪やん中国では違うのか?監視カメラめっちゃ映すやんばれへんの?とか…
ただ!チョウ・ドンユイはマジでいい!かわいい!坊主でもかわいい!演技上手い!泣き顔の演技最高!彼女を観に行ったようなもんだからそこで大満足たんでヨシ!
#67 白夜行みたいな彼氏
大好きな女の子を守るために、離れた場所から見守る姿がまるで『白夜行』のよう。
2人の思い出がwasじゃなくてused to beなら、彼は現在はいないのかな?
主人公がホロホロと泣く姿にこちらもつられて泣いてしまう心に沁みる映画でした。
不毛な若者の恋がメインなのかと思いきや、実はイジメ撲滅を訴えるのが目的なのか、そこの部分は国外向けマーケティング的には削って欲しかった。
イジメよりもあの異常な受験制度や学歴主義をなくしたほうが良いんじゃないの?
香港版”ホットロード”である
香港の受験戦争といじめ問題が主軸の映画なんやけど…
これは香港版”ホットロード”だと私は思ったね。(もちろん漫画原作の方)
バイクに乗る不良の男の子とガリ勉だけど家庭に問題を持つ女の子の純愛ストーリー。
語らずとも通じ合う部分がキュンキュンするんですよ。
エンドロールで「現在、中国ではいじめ問題に対し国を挙げて取り組んでいます」的なメッセージが流されるのは、やっぱり国の印象悪くしたくないからなのかな?
胸熱ミステリー
観てからしばらく経ってしまった。
容赦ない描写と静かに寄り添うような映像で、
前作よりヒリヒリきた。
みんな褒めてるからこれ以上言う事ない。
検閲で公開遅れたのはエンドロールの「虐め撲滅キャンペーン」で解決したんじゃないかな?
内容の素晴らしさは守られていると思う。
虐めっ子が昔好きだった子に似てて
なんかモヤモヤしてしまったよ(^ω^)
秀逸な映像と演技で深く心に染み渡る映画
素敵な映画すぎてしばらく浸っていた。
いじめという重たいテーマをど真ん中に据えながら、ただ弱者に寄り添うだけではなく、支え合い強く生きていく救いの手を差し伸べてくれるような作品。
なにより撮影と編集が美しい。
そして複雑で難しい感情を、繊細な表情と涙で演じきった主演ふたりの演技が素晴らしい。言葉がなくても伝わってくるものがある。
東野圭吾のパクリ論争があるみたいだけど、パクリだけでこの物語と映像はできない。絵画も辿れば太古の壁画の真似から始まってるしね。
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