「亡霊たちに翻弄された」アンテベラム Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
亡霊たちに翻弄された
恐るべき、かつぶっ飛んだタイムスリップ
いきなりネタバレですが、過去の南北戦争の亡霊たちが、現代に「奴隷狩り」に出没するホラー。しかも連れ去られた黒人たちは、現代人が造成した歴史テーマの記念公園で、酷使されて命も失う。
とんでもない綺想によって、鋭くファンタジックに人種問題に切り込んでいますが、こんな公園があるならば、その造成を筋書きにした前夜譚で、既に一作出来そうですね。
血の染みる悪夢が三転!
始まってしばらくは、大農園を舞台にした陰惨なホラーだと思っていました。畑を区切る立木の向こうに沈む赤い夕日。この先、エデンを待ち受けるであろう、運命に気持ちも暗くなっていく。
ところがしばらく奴隷たちの苦渋を描いた後、画面は社会学者のヴェロニカが活躍する現代シーンに変化した。このヴェロニカは、きっとさっきのエデンだから、本作のテーマは「消えることのない遥か昔の悪夢」だ。それで冒頭の「過去は死なない」に繋がる。ヒロインはDNAによって、幾度、大農園の悪夢を見せられるのだろうか。
しかし、目に隈を作った少女の登場をきっかけに、ヴェロニカはホテルから連れ出され、大農園では兵士がスマホを持っている! そうか、これはタイムスリップものだったのだ。つまり前半の大農園が現在で、後半の都市の暮らしが過去。
でも、そろそろストーリーに着いていけなくなった私が戸惑ったのは、時間軸を支配してるのはそもそも誰なんだろう?
エデンが馬に乗って疾駆する場面に至ってやっと私は、この作品が時空を超えた「誘拐譚」と気がつきました。遅い!
プロローグで南部の大農園に着いた馬車の中にいたのが、まさか現代から拐っていった人々とは、怖すぎる。
悪の玩具箱
夜になると王女や騎兵、歩兵やが命をもって動き出す魔法の玩具箱がある。あろうことか、そこから兵隊たちが出てきて、現実の人間をさらっていくと言う話。
ラストシーンで、ブルドーザーがテーマパークを打ち壊して作品は終わるが……