「パラドックス」アンテベラム ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
パラドックス
結構映画館には通っている筈なのですが、全く予告編を見ておらず、事前に主演の方が一人二役演じるということだけ仕入れて鑑賞。中々の盛況っぷりでした。
序盤は奴隷にされている黒人・エデンが脱走を図りますが縄でひっ捕らえられ、他の仲間が巻き込まれ死ぬという悲劇的なスタートを切ります。その後焼印を押されるなど、昔の拷問酷すぎないか?と思うくらい観ていて痛かったです。全体的に白人が黒人を虐める図ばかりで、監督は黒人を守りたいのか?それとも貶したいのか?と少し疑問に思ってしまいましたが、後半になってそれらを捲っていきます。
そんなエデンの生き方とはまた違う現代の裕福なヴェロニカ。旦那と娘と仲良く生活しており、人権活動をモットーに生きている女性です。オンライン取材を持ちかけてきてのも白人で、ここら辺りでお?となったのですが、先程の奴隷パートでも発せられていた"帰郷"というワードが出た瞬間に確信しました。あぁこれはどちらも現代の話なんだと。南北戦争っぽいのは舞台なんだと。拉致され方も油断したら誰しもが警戒しなさそうなパターンなので、現代でも普通にありそうだなと思い、ゾッとしました。
そして状況が合致した奴隷パート。スマホを使いこなせる理由も判明したところで、エデンは脱出を試みます。中盤まで音を立てないように移動しているなと思いましたが、これはこの脱出のための伏線だったんだなと思いハッとさせられました。司令官を起こさぬように、身のこなしを生かして家屋からの脱出を図る、中々にお見事でした。その後も他の兵士を上手いことハメて落としたり、怒りそのままに司令官を殺すなど、画面越しでも伝わってくる怒りにいつの間にか引き込まれていました。
終盤、乗馬して脱出するシーン。ここがもう圧倒的で、ひたすらに逃げる姿は美しく、オンライン取材してきた記者がラスボスとして待ち構えますが、必死の攻防の末叩きのめし、序盤にエデンがされた縄で首を縛られる様子をそのまま記者に再現し引きずり、そのまま瓦礫に頭を衝突させ殺すという、もういっそ清々しいくらいの怒りを最後にかましてきます。そして南北戦争を再現した"舞台"から見事脱出することに成功し、物語は幕を閉じます。
序盤の謎を終盤に一気に回収する流れ、ネタバレ厳禁!という表現がとても似合う作品でした。人種差別というテーマに真っ向から向き合い、制作陣の怒りを全面的にお見舞いされる良作でした。「キャンディマン」といい今作といい、最近の人種間のスリラー・ホラーは面白い。
鑑賞日 11/6
鑑賞時間 15:50〜17:50
座席 D-13