ブックセラーズのレビュー・感想・評価
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私設図書館にほれぼれ
希少本の蒐集・売買をするブックセラーの人たちにたっぷり話を聞いたドキュメンタリー。ブックセラーさんたちの本まみれの店や自宅が素敵でうっとり。
オークションで無茶してしまう心理とか、白人男性が中心の業界であることとか、電子化の波とか、いろんなテーマを横串にしてインタビューしているので飽きない。本を物理的な実体を持つアートとして愛でる人もいれば、特定の題材について書かれた本を読み尽くしたい人もいて、考え方も思ったよりバラエティがある。
雑誌編集者からブックセラーに転身した人が「紙は霊魂の蓄電器だ」って言っていて、なんかいい言葉だと思った。
最後の最後に思わぬ形でデヴィッド・ボウイの名前が登場。ちょうど隣のスクリーンで戦メリを上映していたのでニヤけた。
そりゃあ、好きな本とジャズと猫がいれば、至福の時間が過ごせるでしょう!な作品ですw
前からちょっと興味のあった作品を鑑賞しました。
柏の「キネマ旬報シアター」は良作を上映する、割りと好きな映画館。
都内の映画館が殆ど休館とあって、柏に足を運んでの鑑賞です。
で、感想はと言うと、割りと良い。
心地好い時間を過ごせた感じで結構好きかも。
どんな世界でもコレクションの対象となる物は無限にあって、それこそ人の興味をそそれば収集対象にならない物はこの世に無いと言っても過言でないくらいに収集癖の闇は暗く深く果てしないw
その中で本は比較的安易に収集対象となりうる物で本を1冊も持っていないと言う人は多分皆無に近いかと思われます。
でも、普通はコレクションすると言うよりも家で好きな本をじっくり読む為に買って集めると言う動機かと思うので、最初から読む目的ではなく、集める目的の人は少ないかと。
また、本の本来の意図は読む為の物なので、集める為だけに購入すると言うのはなんだかなぁ~と思ってしまう。
それでも収集する、したい気持ちは分かる。
キャッチフレーズには「本に魅入られた人達」と書かれてましたが、本の収集に取り憑かれたと言うのが正解かもw
読む事よりも、本の文化を残そう!としながらも収集に全てを賭け、いろんな本を集める。ブックハンターと言うのがまさしく正解。
でも、いろんな本があって、人間の皮を使っての装飾カバーにしているのなんて、「馬鹿と天才は紙一重」を地で行く感じw
これは本か?と言う様なのもあったりに興味津々になったりして、「まんだらけ」や中野ブロードウェイ、神田の古本屋の住人をもっとこじらせた様な人々ばっかりw
でも、楽しそう♪
好きな本に囲まれて、ジャズを聴きながら、コーヒーや紅茶、時折ウイスキーを飲みながら、傍らに猫がいるなんて、ここは天国か?と思ったりしますよねw
そんな憧れに触れられる様な作品です。
でも!満点ではないんですよね。
苦言を言うと、中盤辺りから割りと同じ事の繰り返しの様になってて、結構中弛みがする感じ。
なので、99分の上映時間が結構長く感じたりします。
最初はジャズのBGMとコレクションの世界を楽しく観られて、良い感じなのに、後半から本の定義とコレクションの定義の物凄く細かい所に話が入っていく。
「自分の好きなモノを他の人も知ってもらいたい」「自分の好きなモノを語りたい衝動」の典型的なマニアの悪いクセが出ているw
もっと様々なジャンルの紹介やライトな部分、それこそアメリカのマンガの単行本や中国や日本の本について紹介や、本にまつわるもっとマニアックな事をしてくれてたら良かったのにと思ったりします。
例えば、ブックカバーと言う文化は日本特有の物と聞きますし、新刊等でついている推薦文の書かれた「オビ」や「コシマキ」と呼ばれる物だけを売買している業者もいると聞きますが、やっぱりそういう眉をしかめながらも聞きたくなる様な本の雑学なんかも聞きたかったなぁと。
多分、本に触れた事が無い人は皆無かと思いますが、それでも昨今の電子書籍化で出版業界はかなり苦戦していると聞きます。
本を読むと言うのは好きな方ですが、やっぱり以前程購入はしなくなったし、電子書籍やネットで読めるなら、ある程度の物なら、それに越した事はないかなと思います。
でも、やっぱり好きな本は購入したいし、揃えたいと思う衝動はあります。
ミニマリストに憧れながらも収集癖は多分にあるので困ったものですw
でも、本を読むと言うのは様々な世界や自身の知らない文化や知恵に触れたり、感化されると言う、ある意味崇高な文化交流かと思うのですが、行き過ぎた収集は本の本来の意味や意図、意義をちょっとねじ曲げている様にも感じる。
かと言って、情報だけを知れば良いと言うのなら、それこそ電子書籍やネットで十分ですが、個人的には電子書籍やネット本で情報を読んだのを「本を読んだ」と言う風には感じられない。
この辺りは個人的に動画配信サービスでの映画をスマホで見て、「映画を観た!」と言うのには些か抵抗があると言うか、なんか納得が出来ないのとよく似ているかも。
映画は出来れば映画館で観る事、少なくともある程度の大きさのテレビやパソコンの画面で観ないと映画を観たと個人的には思えないんですが、まぁ個人的な勝手な解釈と拘りに過ぎないのも重々承知ですw
本を収集するのは良いとしても、大前提は「読むもの」なので、行き過ぎた収集や過大な価値付けはなんだかなぁ~に感じます。
劇中でも語られたネットの登場で古書や希少本の市場は良くも悪くも大きく変わったと言うのは大いに頷ける。
先月公開された「騙し絵の牙」でも同じく出版業界の事をテーマにして、ラストでは物凄い高額ながら、話題の本を出しましたが(あっちの作品のネタバレw)、ああ言う本が後にコレクターアイテムになるんでしょうねと観ている時に思いましたw
公開時期がちょっと被っているのがなんか面白いですよね。
年々縮小傾向で本の需要が少なくなり、町の本屋さんが無くなりつつあるのはやっぱり寂しい。
本を読む時間は掛け替えの無い時間と言うか、自分には好きな時間の過ごし方でもあるので、改めて本を考えさせてくれる作品。
ドキュメンタリーなので淡々と語られる作品ですが、時折「分かる分かる」と頷ける思いにも共感。
ラストで辛口のオバチャンが「本を絶対に貸さない。何故なら『絶対に返すから。』と言われても絶対に返って来ないから」には笑いました♪
大事な本を返さずに天国に召されたのか、デヴィッド・ボウイw
この辺りの描写と言うか、演出をもう少し中にも入れてたら、肩の力を抜いて観られてたのは惜しい。
でも、なんか、良い作品を観た気になるw
本が好きな方には結構お勧めの作品なので、興味があれば如何でしょうか♪
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