恐怖のセンセイのレビュー・感想・評価
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ケイシーが男の名前で何が悪いんだ!俺は男だよっ!! スポ根ものの定型をぶっこ抜く、予測不能な暗黒成長物語。
弱い自分を変える為、カラテ道場に入会した経理の男ケイシーが、予期せぬトラブルに巻き込まれてゆく様を描いたブラック・コメディ&クライム・スリラー。
主人公ケイシー・デイヴィスを演じるのは『グランド・イリュージョン』シリーズや「DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)」の、名優ジェシー・アイゼンバーグ。
ひ弱ないじめられっ子が武術に出逢う事で新たな自分へと生まれ変わる、『ベスト・キッド』(1984)的な良くあるあれねハイハイ…なんて思っていたのだが、まさかこんな事になるとは💦
「予想を裏切られた大賞」をあげたい、驚きに満ちた一作。
近年問題視されている「トキシック・マスキュリニティ」。本作はこの「有害な男らしさ」を徹底的に皮肉り、体育会系特有の上下関係や努力至上主義に疑問を呈する。
「男らしくなりたければヘビメタを聞け!」や「フランス語なんて女々しい言語ではなくドイツ語を勉強しろ!」など、先鋭化されたマチズモの塊である“センセイ“の助言に影響され、どんどんイヤなマッチョへと変貌していくケイシーの姿は滑稽。ジェシー・アイゼンバーグのヘナチョコ演技は堂に入っており、もはや達人芸である。彼以上にダメなナードを上手く演じられる俳優は居ないだろう。
初めのうちは気軽なコメディとして観ていられるのだが、ケイシーが「夜間クラス」への参加を認められる辺りから映画のカラーがガラッと変わる。
ただの気の良いマッチョな師範だと思われていたセンセイが、暴力と脅迫で生徒を精神的に支配するサイコパスである事が発覚してからはほとんどホラー。どんどんと深みにハマってゆくケイシーと、本性を露わにしてゆくセンセイの駆け引きが緊張感を高めます。
物語が進むにつれダークな色合いは一層強くなり、愛犬の変死や予期せぬ殺人など、もはや笑えない領域にまで到達する。
そして迎えたクライマックス。どんなエグいエンディングを迎えるのかと身構えたのだが、なんとここに来て映画のカラーが再び変化。不条理かつバイオレンスではあるのだが、スリラーでは無くコメディとして映画の幕を一気にオトす。
スポ根コメディから犯罪系サスペンス、そしてブラック・コメディと、まるでカメレオンの様にその色をコロコロと変える作品であり、不定型である事が型となっているという点で『パラサイト 半地下の家族』(2019)に近しい映画であると言えるかも知れない。
「この道場を開いた達人には人差し指だけで人を殺す秘技があった」というただの戯言だと思われていた台詞が実は伏線であったり、銃砲店での件が最後に回収されたりと、脚本の構成も見事。少々設定に無理はあるものの、最後まで観客を飽きさせない工夫に満ちた作品である。
あまりにもアイロニーが効きすぎているので、空手をやってる人は不愉快になるかも知れない。また、最後の展開は鉄砲賛歌にも取られかねないかなりデンジャラスなゾーンだとは思うが、男根至上主義をどこまでもおちょくるその姿勢には思わず快哉を叫んだ。
日本では劇場公開すらされなかったのだが、こういう映画を隠れた名作と呼ぶのだと思う。
“男“なら軟弱な映画では無くこういう骨太なものを観るべしっっ👊!
とても面白い
習いに行った空手道場の裏の顔がとんでもない殺人拳で、殺人を犯しても死体を透明にするシステムまである。変に静かなトーンが不気味。展開は話ができすぎな感じもするけど、面白い。先生がいちいち偉そうでムカつく。あんなふうに偉そうにできていたら楽しそうだ。他の道場や別の格闘技との対決も見てみたかった。
やっぱり拳銃…
が空手より強い。。拳銃は弱者が持つ物、けど片方は死に、片方は生きてる。カテゴリーとしてはブラックコメディなのか。ジェシー・アイゼンバーグが典型的な弱い奴、堅ぶつを好演。優しさや、心の弱さが肉体的弱さにも繋がると、強くなるためには善悪に因われず、弱者をも倒すことを指導する恐怖のセンセイ役アレッサンドロ・ニボラ。その不気味な佇まいが際立っている。
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