「神のみぞ知る」ミナリ はんざわさんの映画レビュー(感想・評価)
神のみぞ知る
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この映画には常に緊張感が漂っています。冒頭のハリケーンに始まって、息子デビッドの心臓病、水場のヘビなど、命を脅かすものが次々に現れ、いつ襲われるか分からない恐怖を感じさせます。ですが、それらの心配事は一切起こらず、結果として家族を襲ったのは予期せぬ事故であり、祖母スンジャの台詞「本当に恐いのは見えないこと」が意味する通りになりました。しかし、この不幸な事故のおかげで家族は守られ、事態が好転するあたりに「神のみぞ知る」未来が表現されています。
このように不幸と幸運に翻弄される中で、家族が変化していく様子も見どころです。夫のジェイコブは迷信や宗教を信じず、自らの知恵によって生きる人間でしたが、映画の最後では夫婦揃って神頼みな様子が描かれます(宗教もまた、不幸な世を生き抜くための一つの「知恵」でしょう)。子ども達も逞しく育っていきますが、娘のアンが母を気遣う場面や、息子のデビッドが脚の怪我を我慢する場面、懸命に走って祖母を止めにいく最後の場面によく表されています。
祖父母との文化の違いは自分にも経験があったので懐かしく感じました。個人的には、悲劇の事故から家族が和解し、立ち上がる様子をもう少し描いて欲しかったですね。最後を綺麗にまとめすぎた印象を受けました。
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