劇場公開日 2021年3月19日

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「韓国映画というより移民から語るアメリカ映画」ミナリ 七星 亜李さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5韓国映画というより移民から語るアメリカ映画

2021年4月11日
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鑑賞方法:映画館

最後まで派手なエピソードもなく、淡々と進んでいくストーリー。
韓国からの移民だから起こる話というより、アメリカに新天地を求めてやってきた移民の人たちがぶち当たる、
貧しさや家族の崩壊、地域の人たちへどうやって馴染んでいくかの葛藤を
夫婦の関係や呼び寄せたおばあちゃんと孫の関わりなどから、韓国というフィルターから抜けて、語りかけてくるところがこの映画の良さなのかと思う。

移民という感覚が、元々、自分が住んでいた国にそのまま住んでいる人には、理解できるようで、感覚としては理解できないのかもしれない。
むしろ、外部からやってきた人たちを無意識のうちに排除してしまう感覚、それが習慣付いてしまっているのが、日本人の感覚なんだろうなあと思う。

そういう色々な国から、自分の居場所を求めてやってきた人たちが唯一繋がれるものとしてキリスト教や教会という存在があるのだとしたら、
他の国に比べて、日本でキリスト教が多くの人に根付かないのもよくわかる。

ミナリ(セリ)は、綺麗な水があれば、どんなところでも育つ植物。
孫のデイビッドの病気も綺麗な水によって、知らない間に少し良くなった。
井戸を掘る時にダウジングという怪しいものは信じられないけれど、自分の勘だけでは失敗してしまう。
おばあちゃんは、色々と問題も起こすけど、おばあちゃんがいなかったら、家族は本当にバラバラになってしまう。

「業に入れば、業に従え」とでも言うのだろうか。
なんでもかんでも最後うまくいくサクセスストーリーではないけれど、
どんなことが起きても生き抜いていける雑草のような強さというのが、今のコロナの世の中に癒しの感覚を与えてくれるのかも。

七星 亜李