「なるほどね」ミナリ aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)
なるほどね
アカデミー賞候補というので、壮大なスケール? 社会問題? 差別? 心をえぐる? なんて構えてみると良くない。普通に見れば面白いが、ポスターの煽り文句につられて、変に展開の先を見てしまって逆効果だ。「大草原の小さな家」の現代版くらいで臨むと、観賞後にふわりとした爽やかさが残る良作かと思う。
表すれば、開拓をテーマにしたドラマ。その現実を、家族の息子であるデビッドを中心に、淡々と描く。心臓が弱く、走ることが出来ないデビッドとその家族が、アメリカの片田舎で、農業で一旗あげようと移住してきたところからはじまる。父のジェイコブは意気揚々だが、妻のモニカは移住先のトレーラーハウスを見て、意気消沈。姉のアンとデビッドは、満足もしてないが不満でもない様子。そんな家族のありようを、ドラマチックな演出は控えて描いていく。そんな家族に、妻の母親スンジャが加わり、物語のテンポが変わってゆく。
育ちのよろしくない感じのおばあちゃんに、最初は距離を取るデビッド。一緒に時を過ごすうちに、徐々に打ち解けていく。かたや父親の農業はなかなか軌道に乗らず、父母は喧嘩が絶えない。デビッドと祖母、夫婦の2軸を中心に、農業を手伝う熱心なキリスト教徒で風変わりなポールが加わり、微妙な関係の変化が丁寧に描かれる。
タイトルのミナリは、日本でいうセリとのこと。なかなかの厄介者である祖母が、同居を始めた時に近くの森の中に植えたのが、ミナリだ。韓国から来たこの家族と同様、このアメリカの大地に根付けるのだろうかと、イメージが膨らむ仕掛けだ。
観賞後、この家族がうまく行くことを、願わずにはいられない。