「見えないことの大切さ」ミナリ Evaさんの映画レビュー(感想・評価)
見えないことの大切さ
個人的にだけれど、最近小津監督作品を追いかけているせいか
とても共通するものを感じた。
下から撮るローアングル
駐車場で話す2人を正面から撮るカットの喧嘩
それを遠くから車越しに見る魔のアングル
家族の物語なので、より一層感じたのかもしれない。
おばあちゃんがミナリ畑でいう言葉が心に引っかかった。
「見えるものは恐くないんだ
本当に恐いのは 見えないことだよ」
全体のストーリーを通してその一言に通ずるものはとてもよく感じる。
見えない神に対する想いや宗教観
子供に対する親の愛情
死に対する恐怖
家族の愛
そう言った目には見えない大切なものをひしひしと感じる作品だった。
個人的な解釈になるけれど、ミナリ畑でのおばあちゃんの言葉に付け足すとしたら「失った時」かもしれない。
目に見えるものはきっとどうにかなる。
本当に恐いのは、目に見えないものを失った時だ。
懸命に育てた農作物を失ったとしても、そこに家族という愛が1つあるならばきっとどうにかなる。
懸命に土地を掘って水を探すお父さんと、ある水辺に自然に育つようにミナリを植えるおばあちゃん。
自然と共存する意味も考えさせられる。
タイトルのミナリに込められた想いは
「たくましく地に根を張り、2度目の旬が最もおいしいことから、子供世代の幸せのために、親の世代が懸命に生きるという意味」
これを知っているだけでも、解釈はかなり変わるのではないだろうか。
思わずうっとりしたのは、真っ暗の不安な夜に歌ってくれたおばあちゃんの子守唄から、朝日が差し込むシーン。
あんな綺麗な温もりのある光、映画で観れるなんて 。
音楽や虫の音がとても心地よい作品だった。