劇場公開日 2021年3月19日

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「川辺のセリが象徴する家家族の姿が眩しい韓流『大草原の小さな家』」ミナリ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0川辺のセリが象徴する家家族の姿が眩しい韓流『大草原の小さな家』

2021年3月23日
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鑑賞方法:映画館

アーカンソー州に広大な土地を購入した韓国系移民のジェイコブは妻モニカ、長女アンと長男デイヴィッドを連れて引っ越してくる。荒れた土地を開拓して野菜栽培を成功させようと意欲的なジェイコブだったが、汚いトレーラーハウスでの生活にモニカは不安を抱く。二人は孵卵場でヒヨコの選別の仕事で生計を立てながら暮らし始めるが、留守中の子供達の世話、特に心臓に病を抱えるデイヴィッドが心配なモニカは母スンジャを呼び寄せることにする。スンジャに初めて会うアンとデイヴィッドはその大雑把で大胆な性格に最初は戸惑うが少しずつ心を通わせるようになる。一方ジェイコブが仕事の合間に淡々と進める野菜の栽培はなかなか思うようにいかず、その苛立ちが慎ましやかな生活の中で雑音を立て始める。

夢想家の父親に振り回される家族の物語というのは決して他人事ではなく、自身の幼少期と数十年前の自身にも、様々なところで出会った移民の方々に聞かせてもらった昔話とも被るもの。突然現れた祖母が持ち込んだ流儀にあからさまに拒否反応を示すデイヴィッドの無邪気にも程がある悪戯も微笑ましい。様々な困難に揺さぶられる家族を象徴するのがスンジャが河原にそっと植えるセリ。様々な事情で祖国を捨てた世代から祖国を知らない世代に受け継がれる逞しさが余りにも眩しいドラマでした。

よね