「韓国映画ではなく、アメリカの映画だ。皆大好きなブラッド・ピットも関...」ミナリ panpan00さんの映画レビュー(感想・評価)
韓国映画ではなく、アメリカの映画だ。皆大好きなブラッド・ピットも関...
韓国映画ではなく、アメリカの映画だ。皆大好きなブラッド・ピットも関わっている。
アカデミー賞の噂からかなり期待していた。
が、そこまで面白いと言える映画には感じなかった。
映像は美しく、素晴らしい。
冒頭のアメリカの家に到着するまでのシーンでは、その美しさから期待せずにはいられなかった。
先日、藁にもすがる獣たちを鑑賞したのだが、スンジャを演じるユン・ヨジョンが出演していて、初めて彼女の存在を知る。韓国国内では人気の高い実力俳優のようだ。本作でもその力を発揮している。スンジャは物語後半で脳卒中で倒れてしまい、体が不自由になり会話も難しくなってしまうのだが、見事に演じていたと思う。
本作の家族は、親が離婚危機である。口論が絶えないので、子供たちはケンカをやめてと書いた紙飛行機を飛ばしたりするが効果ないようだ。私はこういう両親の下に生まれなくて良かったと思う。きっとケンカの絶えない夫婦の子供たちは悪影響を受けていくだろう。
ジェイコブが農業を始めるにあたり、アメリカ人のポールが手を貸した。ポールは休日になると木の大きな十字架を背負って歩くのだが、何故かは理解出来なかった。
孵卵場でヒヨコの選別を行う仕事がある。選別をしながらも、不要なオスのヒヨコは焼却処分されていく。何故このシーンを入れたのか?を考えると、言わば役に立たない人間は要らないと言う、現代社会を表しているように感じた。現代では生産性が求められるので、能力の低い人はこぼれ落ちていく。
映画では仕事を求めていたポールは自分をアピールして農業の仕事を得たし、地下水を当てる仕事をしてる人も生きるのに必死なようだった。ジェイコブも同じで農業が成立させないと貧困へ落ちていくだろう。スンジャも病気でありながらも家族の為に家事をしていた。
イ家は四人家族。父ジェイコブ、母モニカ、長女アン、長男デビッド。時代は1980年代で大統領はレーガンだ。当時は毎年3万人の韓国人が渡米していた。イ家もその中の一つ。物語が進むとモニカの母スンジャが韓国から合流する。
モニカはジェイコブの計画を何も知らずただジェイコブに付いてきた。だから、アメリカの家、と言ってもトレーラーハウスのような、車輪が付いた家を見て、ショックのようだった。
ジェイコブがデビッドに大きな庭を作ろうと言うと、すかさず小さくていいとモニカは口を挟んだ。
ジェイコブとモニカは口論が絶えない。子供たちも2人が離婚したらどちらと暮らすかと会話している。
ジェイコブの計画は、アメリカで農業で成功することにある。だから、大きな庭と言うのは、農園を指している。作ろうとしている農作物は韓国の野菜だ。移民の韓国人向けに韓国の野菜を作れば儲かるだろうと算段している。これ程大きな話なのに、妻モニカは何も聞かされていない。
農業はすんなりと始まるわけではない。まず、畑を耕し水を引かなければならない。ジェイコブは井戸を掘って地下水で野菜を育てようとした。水の確保は上手くいって地下水を掘り当てた。畑は中古の耕作機を買い、開墾した。
野菜を作って農家として生計が立つまで、ジェイコブとモニカはヒヨコの選別で生計を立てる。メスは貴重だがオスは殺処分される。デビッドが孵卵場からモクモクと立ち上る煙を見て、父にあれは何かと聞くと、ジェイコブは廃棄と答えた。廃棄とは?と聞かれると、ジェイコブは役に立たなければならないと答えた。
韓国からモニカの母スンジャが渡米してくる。デビッドはスンジャのことを好きになれない。ある日デビッドはスンジャに連れられ山林の小川に行くと、スンジャはミナリを植える。ミナリとはセリのことで韓国人はよく食べるようだ。
農作物のための地下水が枯れてしまい、ジェイコブは仕方なく水道水を使った。お金が無いのでやがて水は止められてしまう。
ジェイコブとモニカは口論が絶えない。アンとデビッドは親が離婚した後のことを考え、どっちと暮らすか会話している。
ある日スンジャは起きれなくなる。病院で診てもらうと、脳卒中と診断される。その日からスンジャの体は動きが悪くなり、会話もまともに出来なくなった。
農作物が収穫出来たので、スンジャを家に残し家族で街の店舗に営業へ行く。取引が成功しこれからジェイコブ達は成功するかもしれないと思われたのだが、店を出るとモニカはジェイコブとの別れを告げる。家族のことより商売を優先していることが受け入れられないようだ。
デビッドには心臓病がある。デビッドの容態はアメリカに来てから順調に回復していて、医者は今の生活を続けるようモニカに促していたのだが、モニカは今の生活を続けることを拒否する形となった。
家ではスンジャがゴミを集め、庭で燃やしている。燃やす場所は収穫物が沢山置いてある小屋の近くであったため、火のついたゴミがドラム缶から飛び出すと、瞬く間に小屋に飛び火した。
ジェイコブ達が帰宅の道中、焦げ臭さを感じた。家に着くと小屋が燃えている。ジェイコブとモニカは急いで収穫物を外へと移動するのだが、煙の量が多く呼吸が難しく視界も悪くなっていく。
ジェイコブはモニカを見失い、苦しみながらも大声で名前を呼んでモニカを探す。モニカの声が聞こえると、ジェイコブは収穫物を残してモニカと小屋を出た。
スンジャは申し訳なさそうに、家から離れていく。子供たちがスンジャを引き止めた。
後日、ジェイコブは農業を再開しようとする。隣にはモニカがいる。モニカにとって、火事の時にジェイコブが収穫物より自身の事を優先したことが嬉しかったように感じた。
スンジャが植えていたミナリは、自然に増殖していた。ジェイコブとデビッドはミナリを収穫し生活費に立てるのだろうか。ここで映画は終わる。