「おばあちゃんの匂い」ミナリ shironさんの映画レビュー(感想・評価)
おばあちゃんの匂い
夫婦でも価値観が異なる。
世代でも価値観が違う。
子供でも子供なりの価値観がある。
一番小さな社会の縮図である「家族」ですら、様々な価値観をお互いに受け止めることで成り立っている。
おねしょだって、決して悪気は無いのだから、してしまったことを受け止めてお世話をする。…その根底に流れるものを愛と呼ぶのかもしれないと感じました。
親は子供の世話をして、子供はいつしか親の世話をする。そういった人間の営みの力強さを感じる映画でした。
綺麗事だけではない、家族の疎ましい部分や、微妙な距離感も描かれていて、
とくに祖母と孫の関係に惹かれました。
おばあちゃん役のユン・ヨジョンさんが素晴らしい。
子供の頃、祖母と一緒に暮らしていたのですが“おばあちゃんの匂い”ってありますよね?
椿油とパラゾールと線香が混ざり合ったような…加齢臭ともちょっと違う。
私の祖母とスンジャとは全く違うタイプなのに、ふとスクリーンから“おばあちゃんの匂い”を感じる瞬間がありました。
リアルな存在感がそう思わせるのでしょうが、きっと観る人それぞれの“おばあちゃん”が重なる瞬間があると思います。
オスカーノミネートも納得の演技でした。
デビッドとのやり取りが最高で、笑えるシーン(苦笑い?)も多いです。
子供の頃の自分の姿と、近い将来の自分の姿を客観視するような感覚でした。
ジェネレーションギャップは、ウザさの中に新たな発見もあり。
祖母は孫から新しい言葉を吸収し、孫は祖母から真理の言葉を学ぶ。
別々の価値観が混ざり合ってこそ生まれるものもある。
新しい土地にしっかり根を張るミナリは、そんな象徴にも思えました。
追記:映画の中で花札が出てきて「あれ?花札って韓国のゲームなの?」と驚きましたが
日本から海を渡ったカードゲームで、韓国では国民的ゲームなのだそうです。
なんでゲームは荒い言葉とセットだとあんなに盛り上がるんでしょうか笑
私も子供の頃、花札やカブ札で遊んでいましたが、今から思うと相当汚い言葉を使っていましたね。(^◇^;)
今の子供たちもテレビゲームで普段なら使わないような汚い言葉で盛り上がっていますが、一種のストレス解消な気がします。
女もいろんな呪縛に囚われているけれど、男だっていろんな呪縛に囚われているのだなぁ。家長として家族を守るとか。何かの役に立つとか。
何事ものめり込み過ぎるのは良くないですが、膨らんで爆発する前に適度なガス抜きも必要ですよね。男も女も、大人も子供も。