「臨界点」スペンサー ダイアナの決意 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
臨界点
フィクションであろうと、事実に近しい内容であったとしても問題作に思われる。
冒頭のダイアナからして周知のイメージからズレてる。とてもとても美しい。また、よく似ているように見える。メークは良い仕事してた。
第一声に「ファ○ク」との単語があったように聞こえた。あのダイアナ妃が?作品が提示する素のダイアナに面喰らう。
序盤から暴発寸前のダイアナが描かれる。
調度品から衣類、食事、環境と全てが一流で、常に王室に気を配る従者がいて、本人の体調や好みまで気を遣ってくれる。
ただ一つ、自由だけがない。
全て用意され、準備され、常にベストを提供される。
なのだが、ラーメン食べたいって時にステーキ出されても食指は動かない。
…言えば作ってくれんじゃないの?とか、平民の俺なんかは思う。
終始、窮屈な生活。
そのストレスからの異常な発言と行動。こりゃ誰でもおかしくなるわ…等と思ったらいけないのだと思う。
ダイアナ妃の最期をなんとなく知ってる。
報道されてる内容で、事実とは異なるのかもしれないけれど。その最期に導くように物語は進む。
あたかも、それが事実であったかのような人物像と環境が提示され、車等の符号も散りばめられている。
そして、王室側の人間はカキワリのようだ。定められた事を粛々と消化していってるかのように。夫がダイアナに言う事も理不尽過ぎる事はない。ダイアナだけが異質と描かれている。
ゴシップの延長のような感触だ。
ダイアナが壊れ始めていた事の裏付けを示し正当化してはいけないのだと思う。
役者陣は皆さま素晴らしかった。
皇太子だけ「?」だったけど、女王様とかロングの後姿で歩く所作だけで女王様だと分かった。とても入念な役作りだったのだと思う。
正直、クリスチャン・スチュアートに惹かれて観に行ったのだけど、彼女は破天荒なダイアナにはピッタリだった。
終始、重たい雲に覆われたような作品だった。
「自由」ってのは、自分が認識している以上に尊いものだと思えた。
寓話、ねぇ…。
【寓話】比喩によって人間の生活に馴染みの深いできごとを見せ、それによって諭すことを意図した物語。