「ところどころ過激」スペンサー ダイアナの決意 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
ところどころ過激
面白くはないが、変わった映画で楽しめました。
「事実をベースにした寓話」と本編冒頭にクレジットがありましたが、自叙伝や暴露本、インタビューなどから組み立てた「推測と想像の創作」という色合いが強いように感じました。
冒頭の第一幕では、一見すると生活習慣や伝統に適応できないワガママ女の錯乱話に思えます。
だが途中、二幕目あたりから、しっかり旦那が浮気しているのがバレた時期ゆえ、精神が壊れた、という描写となっておりました。
鬱によって正常さを失った女性と、それを取り巻く環境を、ホラーやサイコサスペンスの技法で描いていて。
「いかに怖がらせるか?」のあとに「この緊張をどう破綻(解放)させるか」。
『シャイニング』のような積み上げで、『ジョーカー』に近い解放の仕方かな。
カカシに着せていたダイアナの父の古着がキーワードとなり、「私はカカシのように立っているだけにはならない」と「私は王室に負けない、スペンサー(旧姓)として自分らしく生きる!」と決意するだけの内容だから、その気になれば10分程度でも表現可能なほど薄いのですが。
その決意に爽快感を覚えられるかどうかが、この作品を楽しめるかのポイントかな、と。
「あんな豪華な暮らしで、なんの不満が?」「大人ならちゃんと役割を果たせ」と、パワハラ肯定派なご意見の方には、全くつまらない映画だと思います。
表現はところどころ過激。
執事や衣装係にSPが四六時中付き纏い、監視している目を振り払うためとはいえ、
「〇〇がしたいから一人にして」
ってセリフはやり過ぎ感。
ダイアナが信頼する侍女のマギー(サリー・ホーキンス)が、「愛してます」と告白するシーンは、コミカルな百合に見せてますが、おそらく「国民の代表」として、ダイアナへの好意を代弁する意味なのだろうと解釈。
ロイヤルコーギーにしては、犬の毛の手入れがちょっと荒かったように感じました。