「抑圧は永遠ならざる解放へ」スペンサー ダイアナの決意 ますぞーさんの映画レビュー(感想・評価)
抑圧は永遠ならざる解放へ
ダイアナ
(プリンセス・オブ・ウェールズ)
現英国王チャールズ3世の最初の妻
1981年に恋愛結婚で結ばれ
第一位王位継承者ウィリアムら
2子を設けるも
常に注目される立場
度重なる夫の不倫や
王室生活へ馴染めず
精神的な状態悪化も重なり
1992年に息子たちを連れ別居
1996年についに離婚
その翌年にパパラッチに
追われた際の交通事故で
非業の死を遂げる
その類まれな
ファッションセンスや
人当たりの良さ
慈善活動への積極性など
英国民ならず世界中にファンが
多くその早世は大変
惜しまれることとなった
この映画はそんなダイアナの
人生の岐路ともいうべき91年末の
サンドリンガムにおける王室の
クリスマス休暇において
精神的にピークに達し
心を置ける人も周囲におらず
疑心暗鬼の塊になっていた
当時若干30歳のダイアナを
ほぼ同時期の年齢の
クリステン・スチュアートが
憑依したかのように演じている
作風はただただ陰鬱
妄想と現実が入り混じるような
あたかもホラー映画のような
描写が印象的です
サンドリンガムの離宮の
ダイアナの部屋に置かれた
「アン・ブーリン」の本
アン・ブーリンとは
離婚がしたいこいつのせいで
英国国教会が本家から分離する
羽目になったヘンリー8世の
2番目の妻でエリザベス1世の母
でありながら国王暗殺の
嫌疑をかけられ処刑された
悲劇の王妃
ダイアナは王位継承者を
二人も産んだ事で自分も
同じだと思い込むようになって
いきます
王室には伝統と仕来りがあり
クリスマス休暇の前と後で
1kg太る事や王位継承者が
キジ撃ちを覚える事など
ダイアナは自分の息子たちを
精神的な支えにしていましたが
とうとう年齢的にもそんな時期
どんどん王室に染まっていく
中でウィリアムは王になる事を
覚悟を決めており
適応できない自分への苛立ちも
抱えることに
夫チャールズも
そもそも姉セーラと付き合っていた
中で王室にふさわしい人的として
プロポーズしてきたのに
結局ずっと付き合っていた
カミラと言う女性の存在など
女性関係は荒れているにも
かかわらず王室の人間として
馴染もうとしないダイアナには
頭を痛めていた現実も
あったようで味方をして
くれません
あまつさえカミラにも同じ
ものを贈ったという
真珠の首飾りを巻くたびに
拒絶反応が出るような描写が
印象的でした
ダイアナ唯一の味方の衣装係のマギー
も着替える際に部屋のカーテンを
閉めなかった(=パパラッチ対策をしない)
とロンドンへ帰してしまいます
チャールズは抗議するダイアナに
「国民が望む生活を我々はしなければ
ならない」とダイアナを説き伏せようと
しますが国民が望む生活とは?
王室が伝統を守る事なのか?
不倫はええのか?
矛盾をダイアナも映画を観ている人も
強く感じるところです
ただ指定されたドレスを着ない
ダイアナへのエリザベス女王の
「どんな格好をあなたがしても
結局国民が最も目にする私たちは
紙幣の肖像画なのよ」というのは
なかなか深いです
面白いのは王室の従者たち
別に孤立しているダイアナを
王室に馴染まない存在として
敵視しているわけではなく
最大限接してくれています
料理長のダレンや
クリスマス休暇の護衛任務の
責任者を務めるグレゴリー大佐は
チャールズの部下なんでしょうと
言うダイアナへ
「我々が仕えているのは王権にです」
という言い方をします
ダイアナはサンドリンガム亭の
近所にあった自らの生家である
廃墟となったスペンサー家の屋敷へ
子供時代の自分を探しに行きますが
そこでついぞ自殺企図を起こしますが
アン・ブーリンの幻影に止められ
ダイアナは真珠の首飾りを
引きちぎります
そして息子たちがキジ撃ちに
向かった日
ダイアナは息子たちを連れ
屋敷を出ていきます
ついに「別居」となったわけです
まぁ寓話を前置きしていますので
そこまで実録的に捉えなくていい
作品だと思いますが
日本にも皇室があり
丁度年齢もダイアナ妃に近しい
雅子様の苦しみなど似たような
境遇があることを記憶します
周りから見ればそういう家なんだから
合わせなければならない
そうやって続いてきたんでしょ
という意見もごもっともだと思いますが
家柄や才覚だけではどうしても
合わせられない事があると思います
そうした苦しみを理解するには
良い作品だと思いました