「そこに浮かび上がる悠久の時の流れが心を揺さぶる」時の面影 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
そこに浮かび上がる悠久の時の流れが心を揺さぶる
本作は原題”The Dig”さながら、考古学の常識を変えたサットンフーの遺跡発掘を描くとともに、そこに埋もれ、日の目を浴びなかった主人公らのドラマを丹念に掘り起こす。核となるレイフ・ファインズやキャリー・マリガンの演技は、決して想いを主張しすぎることなく、むしろ内側にてじっくり醸成させた”寡黙さ”が印象的。そんな彼らの見つめる景色は悠久の時を描くキャンバスのようでもあり、アングロサクソン人のこと、身近な人の死、戦争の足音、夜空の星々、さらにはいつか地球から宇宙へ飛び出す未来のことさえ包み込みながら、追想は無限に広がっていく。そこで見つかるのが埋葬用の船というのも極めて示唆的だ。ここはある意味、古代人の終着地であり、なおかつ新たな世界へ向けた出発点。死を思い、死を超えていく場。歴史ロマンを味わい、主人公らの生き様を讃えるべく、昨今、多くの観光客がサットンフーを訪れているというのも頷ける話だ。
コメントする