「地味だけど滋味」時の面影 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
地味だけど滋味
文芸ドラマのキャリーマリガンでなく、ふつうの現代人の、あまり真面目でないキャリーマリガンが見たいのだった。
トレーラーをみるかぎりPromising Young Woman(2020)が、それな感じだったが、日本へ来たんだろうか。来るんだろうか。
ネットフリックスの新作にキャリーマリガンがいて、わくわくしてみたが、やっぱり文芸風のドラマだった。
そんなドラマのなかでも、精彩ある人だが、なんとなくハメを外さない役回りばかりのひとである。
だらだらした主婦みたいな、立派じゃないキャリーマリガンが見たいと、キャリーマリガンを見るたびに思う。
Promising Young Womanはサンダンスでの好評という信頼性に加え、rottentomatoesでも91がついていた。
昨今のご多分に漏れず、禍で公開が遅延し半端な感じに終わったようで、どこかの配信サービスがアプローチしてくれたらいいなと思う。
この映画はレイフファインズとキャリーマリガンが主人公だが、やがて発掘にたずさわる様々な人物があらわれ、焦点がぼやける。
やはり、あらかじめストリーミング(NetFlix)配信が決まっているものは、いわゆるディレクターズカット風な、枝が付いた状態で供給される──ような気がする。
理念はあるし、撮影も優れているが、まったりな進み具合と相関が入り乱れることで、テンポを欠いている。
その感慨は、すべてではないが、NetFlixの映画に共通している。
おそらく劇場公開よりも、実験やイレギュラーを試せる余地がNetFlix公開にはあるのだろう──と思われる。むろん、じっさいは知らない。
が、そうじて尺が長め。もっと編集できる。──と思えてしまう。
発掘地の地主エディスプリティ(キャリーマリガン)は不治のやまいにかかっている。
やはりじょうずだが、じょうずだから余計に、薄幸のキャリーマリガンなんてこりごり。老けっぽい顔も痩身もだいすきだが、いかんせん、いつだって文芸キャラ。で、これは、また冒頭の話に戻る。
映画の軸は、ゲイ疑いのある夫をもったペギー(リリージェームズ)とプリティの弟との熱愛へ寄り道する。
破綻はしないが、まだるっこしい。
やがて戦争がはじまり、発掘のドラマはそこで費える。
いろいろconsも述べたが、映画の結論は高尚で、あなたの功績や努力は、いま認められないかもしれないし、存命中に浮かばれることはないかもしれないが、いつかきっと認められる──という話。静かだけど、力強い物語だった。