劇場公開日 2021年1月29日

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「ホラーとSF、風刺と寓話、倫理と欲望、隠喩と象徴。雑多を放り込んだ闇鍋は深読み派の大御馳走」プラットフォーム 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ホラーとSF、風刺と寓話、倫理と欲望、隠喩と象徴。雑多を放り込んだ闇鍋は深読み派の大御馳走

2021年1月23日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

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青年が目覚めるとそこは獄房風の2人部屋。壁には「48」の数字、天井と床の中央部には四角い大穴。最上部から食事を載せたプラットフォーム(台座)が1日1回降りてきて各層に2分ずつ留まり、その間だけ食べることが許される。上の層から順に食べるので、48層に降りてくる頃には残飯状態。ここでの暮らしが長い同室の老人曰く、1カ月毎にランダムに別の層へ移送され、100層より下になると食べ物はもはや何も残らないという…。

特殊な閉空間でのサバイバルは「CUBE」、居場所と食料事情で格差社会を風刺するのは「スノーピアサー」といった具合に、先行作品のアイディアを巧みに盛り込みつつ、随所に象徴や示唆的な要素をまぶして深読みを促す味つけも。少し挙げると、青年が一つだけ持ち込みが許される物として小説の「ドン・キホーテ」を選んだのは、現実が見えていない理想主義のインテリを表す。彼が好物と伝えたエスカルゴ(かたつむり)は、「怠惰」「聖母マリアの処女懐胎」「無限(殻の螺旋より)」の象徴とされる。ちなみにかたつむりはサグラダ・ファミリア(聖家族教会)の装飾にも使われるが、同教会が天へ伸びる塔ならば、本作の構造物は地獄の底へと深く潜る地下の塔のようだ。

青年が訪れる階層の数字に込められた数秘術における象徴性など、深読みできる要素はほかにもたくさん。過激なサバイバルの描写が人によってはゲテモノ料理に映るかもしれないが、深読み好きのジャンル映画マニアにとっては御馳走になりそうだ。

高森 郁哉