劇場公開日 2021年1月15日

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「規則的に回るアトラクションと不規則な感情がシンクロしたとき」恋する遊園地 わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0規則的に回るアトラクションと不規則な感情がシンクロしたとき

2021年1月17日
PCから投稿

 もう設定が魅力的じゃないですか。それが実話に基づいた話だと知ってより深みが増し、何から何までが初めて経験する映画体験ばかりで、非常に面白かったです。

 遊園地のアトラクションに本気で恋をするというお話。もともと遊園地が大好きで、ミニチュアでアトラクションを作ることが大好きだった主人公のジャンヌは、実際に遊園地の夜間スタッフになる。新たにその遊園地に導入された「ムーブイット」という新アトラクションのライト、ボディ、オイルに惹かれたジャンヌは、そのアトラクションを「ジャンボ」と名付け、語り掛けると、アトラクションも光を放って反応しだすというファンタジーのような恋の話。

 そのアトラクションは前後にも揺れながら回転するというようなアトラクションなんですけども。とはいえ機械ですから、ある種規則的に回り続けるんですけど、ジャンヌの気持ちも取り巻く登場人物の気持ちはその時々の感情に合わせて不規則で、対比になっているような気もしました。恋するアトラクションがジェットコースターや自ら回転数を変えられるコーヒーカップでは感じられない意図的に選ばれたアトラクションだと思います。

 アトラクションとの官能的なシーンがR-15指定になる理由なんですけども、これが見たことのない映像で。恋する感情が高ぶっている様子を、オイルが染みていく様子で表しているのが自分にとっては新しかったです。

 フランスでは少しずつ流行り出しているんですけども、主人公は基本的にノーブラなんですよ。これも母親の「恋人を作りなさい」「結婚しなさい」「私みたいになってはいけない」という強迫観念にも似たような感情から解き放たれたいというのを表しているのかなと思いました。実はこの作品は、母親の子離れの話でもあって。それを誘うキャラクターも魅力的でした。

 「燃ゆる女の肖像」でも好演していたノエミ・メルラン。今後も覚えておきたい女優の一人です。

 正直、夜間にアトラクションが動き出したとき他の従業員は気づかないのかとか、遊園地の経営状況とか、フィクションラインぎりぎりのところを言っているので、そこが気に障るとのれないかもしれません。あと、幸せ貯金の伏線が回収されなかったように思えるのも・・・。買い取るかと思いました。

 オープニングとエンディングがジャンヌと母親のドライブシーンで対になってるんですが、オープニングの方が二人ともハイテンションなのにエンディングの方が心が通い合っているように見える、そんなところまで行き届いている素敵な作品でした。

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わたろー