竜とそばかすの姫のレビュー・感想・評価
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「欠落が育んだ力」が解放される美しい物語
この映画は「すずの成長物語」として語られてることが多いですが、私は「成長の物語」ではなくて、隠れていた力の「解放の物語」ではないかと感じました。彼女はBellになる以前に(解放されてはいなかったけれど)すでにいろいろなものを手に入れていたのだろう、と。そしてUの世界で、音楽の才能に導かれてBellという役割を演じることで、そして自分と同じ欠落を抱えた人との交流を通じて、その隠れていた力を解放する。そういうお話なのかなと。
●すずは、「得難い力」を秘めた人
すずは母を亡くした大きな欠落、そして、母はなぜ私を置き去りにしたのかという謎を抱え、あがき、苦しみ続けるのだけれど、それでも「大きな力を秘めた人」として成長してると感じます。カラオケでマイクを向けられたとき、彼女は「歌え」という強迫の声を聴きます。それは、本当の声ではありませんが、その場の状況が作り出す強迫性をありありと「声」として感じている。それは、ある種の「力」であって、それは今の時代には「得難い力」なのではないかと思います。それは、彼女の抱えた欠落が、高知の自然が、父親の控えめだけれど深い愛情が、友人や大人たちが、時間をかけて育んだものでしょう。その力を象徴的に示しているのが、母親から受け継いだ音楽の才能なのではないかと思います。
●Asで「得難い力」が解放される
例えば、私は英語で会話をするとき、まるで別人格になった気がしますが、それはある種の解放感が伴った感覚です。きっと母語とは違う言語を使うことで「本人にさえ隠れて育っていた人格」が解放される、そういう現象ではないかと思います。
Uという「リアルとは別の世界」とAs(アバター)にも同様の(もっと強い)働きがあるのではないかと思います。それは「隠れて育っていた人格」が動き出す、そういう効果です。すずの場合、それは秘められていた「得難い力」の解放であり、それが音楽の才能の開花という象徴的な出来事として描かれているのかなと。
●竜との関係
すずの「得難い力」は、「欠落に苦しみ、それを隠す人」を見つけてしまう。それが50億の中から一人を見つけ出す、という象徴的エピソードになるのかなと。彼女は隠そうとする竜に対して「聞かせて」「見せて」と歌いますが、それは恋愛感情というより、相手の欠落を感じてしまうことで「自分の欠落から湧き出す衝動」のような身体性に近いものなのかな、と思います。でも、彼が隠さざるを得ないことも、聞かせること、見せることが彼にとってどんなに難しいかも、すずにはわかる。私だけがそれを見せてもらう権利があることも痛いほどわかる。だから、Uという異世界で自分を晒すことも厭わなかったし、DV親のいるところに、(気持ちを共有できる)自分一人で行かなければいけないと感じたのだろう、そう思います。
●残された問い
成長がかんじられるためには「育む力」と「解放する力」という別の力が必要なのだろうと思います。まずは隠れて育まれたものが、何かのきっかけで解放される、そういう順序なのだろうと。そしてUのようなサイバー空間に「解放する力」があるとして、そこに「育む力」があるのか?がこの映画の残された問い、になっているような気がします。
歌えなくなった少女がもう一度歌えるようになるまでのお話を…
圧倒的映像美と珠玉の音楽で包んだ名作。すべて鈴目線かつ娯楽性より芸術性がかなり高いので展開は分かりづらい。海外の方が受けそう。サマーウォーズが夏希と健二の恋の話に見えて健二が佳主馬を救う話なのと少し似ていると感じた(恵の目も佳主馬と似てるし)。世界観は美女と野獣、観たあとの感覚はハウルの動く城だけど描きたいのは全く別の話だと思った。
監督のメッセージは、
①『バズ=誰でも注目を集められるネット現象がいかに空疎な個々人の感想の集合体か』
②『顔を隠している間は心と心は繋げない』
③『親切や自己犠牲、純粋な善意=“母性”の美しさ(単純な母親神話・母性礼賛ではない)』
だと思う。
①は簡単にペギーからベルに人気が移ること
②は恵が鈴を一切信用しない→鈴がアンベイルして歌う中で母の行いを理解し心に灯りを取り戻す→世界中のAsの心が鈴の灯りで繋がれる流れ
③は見知らぬ子供を助けて亡くなった母と、見知らぬ人を無責任に傷つける人間を対比することで表現されている。
太陽の世界は現実、月の世界はU(ネット)。
月の世界でオタクが脚光を浴びるように、バズが例え空疎な個々人の感想でも『U』がその人の真の力を開放するのはネットパワーそのもの。
ルカちゃんやカミシンはネットに頼らなくても間延びした平和な世界で生きていける。ヒロやしのぶ、バランスを取って生きられるふたりは鈴の力に気づいている。鈴は現実でも母を失い裏切られたと思い、ネットでも母への心無い中傷を受けてまともに食事が取れないほど塞ぎ込み、自信を失い自分の心や好きな人を思う気持ちすら否定し続けている=ヒロは月の裏側に隠れて居場所のない鈴に月の世界で自信を取り戻させようとし、しのぶはあくまで太陽の世界で鈴らしく生きてほしいと願っていた。
なぜ竜を助けたのかは、恋心だと周りのおばちゃん達は安易に思っているし本人もそうなのかなと思っているけど、実際は『お母さんが見知らぬ子を助けた理由を探すため』『人生の傷にお互いが共鳴しあっていたから』。
竜とベルは恋をしているように見えて『月の裏のような、上手くいかない誰も助けてくれない人生を生きる自分たちを互いに救いあう』関係で、そういう『恋愛には発展しないけど心が通じあう関係』はおばちゃんの一人が語っている。
同時に『秘密のバラ』は“お母さん”の象徴(恵と知の部屋に赤いバラが活けてある)。
つまり『恵は鈴から見ればかつての中洲の子供だけど、知から見れば自分を命がけで守ってくれる母』。
世界を憎んでいた少年が誰かに『大好き』と言えるくらい世界を肯定できるように戦った鈴もまた、自分の母と同じ行いをしたことになる。
だからふたりは一緒に踊って空を飛ぶし、心を通わせて抱擁する。
一方で実際に命がけで天使(知)を守る恵は、鈴を見守っているとはいえ実際に鈴のために傷つく訳ではないしのぶとの対比でもある。
しのぶはずっと『お母さん』でなく『同級生の男』になりたかった。鈴が自信と笑顔を取り戻して『解放され』心の自由を得たが、恵はこれからも『解放を望まず』天使である弟を守ると思う。
しのぶの思いが恋か友情かは語られていないが最後に『(鈴の歌を)聴いてる』と言っているし『やっと普通に鈴を好きになれる』かなと。であれば車に遮られて鈴が告白しそこなった時も、鈴の想いに気づいていたけど『(鈴が鈴でなかったから)まだ言ってほしくなかった→先にベルは鈴だと言い当てた』かな?
しのぶはずっと『鈴が心から笑えないなら俺も笑わない』的な自己犠牲を払っていたと思う。
また、ペギーは中洲から助けられた子供(だから自分をアンベイルして誰かを助けようとする鈴に最も早く反応した)、ジャスティンは恵と知の父親(だからU警察としてスポンサーを多数得て冒頭でインタビューされていた)。腕時計アップ=アンベイルバズーカと完全に一致。やたら良い家に住んでいるのも説明がつく。
これまで助けると言いつつ周りが動かなかったのはUの大物だったから(著名なYoutuberのメタファー、VoicesはGoogle)。でも虐待映像で炎上したので、これから恵が世界に暴露すれば名誉失墜&警察沙汰→『これまでは誰かの“助ける”を待っていた恵が自分で戦う』ということ。それができるのもまたネットの力。
ちなみになぜ中洲に子供がひとりだったかは、例の『玄倉川』モチーフかと(ちょうど夏休みだし…)。今の世の中で彼らを助けて亡くなる人がいたら『あんな連中助けるな』『我が子を残して死ぬなんて無責任』と叩く人は絶対いるだろうな。
…と。ここまでは全部個人の感想と考察です。明確な根拠があるわけではないのでご容赦ください。ほかにもベルが巡音ルカに似てるなぁとか、恐らく何らかの発達障害を抱える弟を『天使』として表現しているところなど魅力を語れば止まりません…!
そして何より、中村佳穂さんと常田大希さん(millennium parade)という私得映画。
こんな素晴らしい作品にエキストラシンガーズとして参加できたのは本当に嬉しい。
何回も観たらその分違った味わいがありそう。
細田監督ありがとうございますm(_ _)m
ストーリーは無視して壮大な音楽と映像を楽しむ作品
この作品はストーリーはあまり深く考えず空っぽの頭と心で素晴らしい音楽と映像を楽しむ為の作品です
冒頭初っ端の巨大な鯨に乗って歌うベルはまさに圧巻
パプリカという映画のパレードを彷彿とさせる壮大な迫力で一気に映画に引き込まれます
賛否両論はありますがベルのキャラデザインや衣装も私個人的にはかなり良かったです
独創的で斬新
衣装一つ変えるだけで、ベルが大人びたり無邪気になったり華やかになったりで見ていてとても楽しかったです
ミュージカルを忠実にアニメ化したような感覚
まさにディズニーなんだけどパクリじゃなく細田守らしさをしっかりと出して完璧なオマージュになってます
キャラ一人一人も人間出来過ぎな感じはあるけど、それぞれが自分らしい個性を持ってて私は好きでした(あいつ一人を除く)
ただストーリーはツッコミ所満載なので気にしないようにするのがオススメです
リアリティを追い求めるのではなく、アニメらしさを楽しむのがこの作品の良さを一番に感じられます
それを踏まえて是非劇場で音楽と映像を楽しんできてください
見知らぬ誰かを大切に思う心
ネットで匿名で、リアルな自分ではない姿で、世界のどこかにいる見知らぬ誰かと出会うことができる。
リアルな世界でリアルに会っている人同士でさえ、お互いに全てを知っているわけじゃない。心を通じ合せている人なんて、本当はごくわずか。
ヒロちゃんの毒舌に納得する。
ネットでは匿名だからこそ、リアルではしないようなことをすることができて、人を傷つけたり、癒やしたりできる。
自分の姿じゃなく、理想の自分にもなれる。
すずちゃんのお母さんは、見知らぬ女の子を助けて死んだ。
すずちゃんも、ほぼ見知らぬ男の子たちを助ける。ずっとお母さんを理解できずに苦しんでいたけど、自分で体験して初めて理解できた。
自分の居場所を感じられないまま生きて行くのは苦しい。
ベルが竜のことが気になったのは、居場所のないリアルな自分と竜が重なったからじゃないのかな。
ネットの仮想世界で、リアルに出会うよりも沢山の人に出会えるからこそ、見知らぬ誰かを大切に思う心を持ってほしい、というふうに感じた。
正当な評価を受けるべき作品
細田監督の認識は薄かったのですが、地上波で流れた「バケモノの子」がなかなか良かったので、衝動的に観たくなり家族で行きました。
とにかく細部まで丁寧に作りこまれている作品です。映像・音楽の良さはもちろん分かり易いのですが、家族の死を受け入れられない女子高生と父、片親家庭におけるワンオペが引き起こす虐待、SNSに拡散する無責任な誹謗中傷・まやかしの正義、高校生の淡い恋模様、など複数の社会的なテーマが絶妙に盛り込まれており、「サマーウォーズ」のような単なる娯楽作品には留まりません。
なぜレビューで低い評価を付ける方が目立つのか、その内容を読んでみると、監督の意図がうまく伝わっていないようです。そしてそれが、ご自分の読解力不足と考えず、説明不足ととらえているようですね。年代による差もあるのでしょうか。
単純で娯楽性要素の強い作品が万人に広く受けやすいですが、本作のように想像力や理解力を要求するもの(私は分かり易いと思いますが)も、素晴らしい作品は正当な評価を受けるべきです。
自分が気に入らないからと言って、この作品のレビューにボロカスコメントを書くのはどうかと思いますよ。そのような考えがSNSで拡散され主流となる世の中は恐ろしいです。まさにこの映画のテーマでもあるのですが。
それでも私以上に深く理解している方もたくさんいらっしゃり、レビューを拝見すると安心します。鈴が自分の行動を通じて、母親の気持ちの理解に至った瞬間の表現は圧巻でしたね。あえて付け加えるなら、私は二人の父親の気持ちに注目しました。
一人目は鈴の父親。突然愛する妻を亡くし、その後心を閉ざしてしまった娘と暮らす。辛かったでしょうね。不器用だが大切なことは理解している彼は、娘を信じて見守り続けました。終盤の役所さんのセリフ、他の情報を遮断した演出は見事です。
もう一人は恵の父親。こちらも妻を亡くし(詳細は不明:例えばこれを説明不足と非難する必要があるのか?)たあと、二人の息子(しかも一人は要特別支援)を育てている。対外的には評価され(?:報道写真があった)、「出来た父親」を演じていたが内情は違っている。子供たちに辛く当たるのは、自分でも間違っていることはわかっているのに、もう一杯一杯で変わることが出来ない、自己矛盾。しかし、そこに突如現れた鈴の毅然とした態度に、遂に我に返る。鈴を殴ろうとしても殴れない父親の葛藤を、繊細に表現した路上シーンは素晴らしかったですね。鈴は父親も救ったのです。
細田監督に興味を持ち、「未来のミライ」を観てみました。未熟な両親が二人の子供の育児を通じて成長していく作品ととらえました。子育て・家族の営みは、時を超えて脈々と受け継がれ、これからも続いていく、それをファンタジー風に表現しています。低評価のレビューが並びます。確かに娯楽性が乏しいですし、このテーマでは一般受けはしないでしょうね。でも「竜とそばかすの姫」を見た後では、ジワジワと感動が押し寄せてきます。ああ、細田監督は人間愛に溢れている人なんだ、頑張っている人を応援しているのだ、理不尽な誹謗中傷や、薄っぺらい正義感は苦手な人なのだ、と私は理解しました。
このような素晴らしい作品を世に送り出して頂いた、監督・スタッフの方々に深く感謝申し上げます。今後の活躍を期待しています。
歌が秀逸
この映画のテーマは「守ること」
それにつきるのではないでしょうか。
ネット社会に生き、ストレスを抱える現代人が無くしてしまったもの、
それに気づかせてくれたので、Belle の最後の歌が人々の心に響いたのではないか。
そう思えてなりません。
歌がほんとに良かったです。
設定のささいな部分は、映画なので良いと思う。
あとからキャストを知りましたが、
合唱団が豪華メンバーでしたね。
難しく考えすぎなんじゃない?
映画を観た余韻に浸りつつ、その余韻を共有したくレビューサイトを見てみると批評が多い?何で?思わず登録をしてレビューをば。
これは作品の品評ではなく、観た後にコーヒーでも飲みながら、こんな所が良かったよねと吐き出すような感想です。ネタバレを過分に含みます。
映画を見る前に主題歌のPVを観て、テンション上がる。
歌単独だと響いてこなくても映像と一緒だと印象も評価も上がる。
アニメや映画の歌は映像ありきで良くも悪くもなるし、逆に良い作品には良い歌や音楽は必須。
そういう意味でも映画館に足を運ぶ前から期待は高かった。
ストーリーは非常にシンプル。
幼少の頃にお母さんを亡くした鈴。お母さんは、増水で中洲に取り残された子供を助けようと川へと飛び込み、子供は助かるけど、結局自分は亡くなってしまう。
鈴は音楽が好きだけど、そのショックで歌う事ができなくなってしまう。
思いを吐き出そうと書き殴っても、それは形に、歌にならず。
でもUと出会って、もう一人の自分を手に入れることで、歌うことが出来るようになる。
その世界で、同じように傷ついたAsの竜と出会い、ひかれる。
あなたは誰?
これはこの映画の予告からも再三鈴が呟くメッセージ。
黎明期のMMO経験があるから共感する部分もあるのだろうか。匿名性の高いもう一つの世界で、気になる存在。ひかれるプレイヤーに、あなたは誰?と問いかけるのはそれほどおかしな事ではないように思える。
そして、ついには竜の存在突き止める。彼を救うために自らアンベイルを受け入れる事。それはありし日の川に飛び込んだ母の姿と重なって。ずっと、何故自分を残して見も知らぬ子供を救おうと思ったのかが理解できなくて、でも、その瞬間に、きっとそれは理屈ではないのだと理解する。
そしてそれは歌に乗って、多くの人々が共感をする。涙する。
あなたは誰?これはベル自身にも再三向けられた言葉でもある。彗星の如く現れた新進の歌姫。その正体は?
Uでは、誰もがあたらしい世界で新しい自分を手に入れる事が出来る。
アンベイル、強制的にアバターではなくその人の本来の姿、オリジンを暴くその光は、Uの世界でのもう一人の自分を殺す事でもあり、裁きでもある。
にも関わらず、その光を自ら受け入れた鈴の姿は、自らをかえりみず川に飛び込んだ母と重なる姿でもある。
そしてUの世界のベルは死すかと思われたが、結果として人々に受け入れられ、Uの世界にも受け入れられる事になる。
鯨は、Uの世界を管理するAIのもたらした演出だし、ベルの自己表現の一環でもあり能力でもある。
まぁその辺りの解釈は人それぞれだろうから置いとくとして、鈴が竜にひかれ、自分を顧みず救いたいと思い、自らアンベイルを受け入れる一連の流れはシンプルだし分かり易い。
そして、歌う事が鈴にとってかけがえのない自己表現であり、自分を曝け出して、それでも歌うその姿に共感し思わず涙が溢れる。
諸々の世界観の整合性や、竜をリアルで助けに行く所の妥当性の考察や、そうした一切合切が蛇足。脚本の作り込みが甘いと指摘もあるが、これ以上ディテールをごちゃごちゃにしても意味が無いよね。
古き良きアニメ、特にSFや特撮物を、リアリティーが無いと酷評する人が居る。それこそ、ドラえもんにリアリティーが無いと言い、キャプテン翼にそんなシュートを打てる奴はいないとダメ出しをする。それはナンセンスだ。
映画冒頭の鯨に乗って唄うベルの姿は、時系列だと本編の後だと考えられる。
多くの人々がベルのオリジンを目にして、冴えない、何処にでもいる女の子だと皆が知っている。それでも、ベルはUの世界で新たな自分を手に入れた、最も有名なAsの一人だと説明をされている。でも、それは仮初なんかじゃ無い。
Uとは、仮想現実の中で仮初の自分を手に入れる事ではなく、Uを通じてその人が秘めていた才能や能力を開花させるアプリである事。
それは、視聴者へ向けたメッセージとも取れる。
冒頭のUを説明するナビゲーションと、最後でもう一度繰り返されるUの説明。十分に伝わる内容ではなかったろうか。
あなたは誰?それは視聴者へと向けられたメッセージでもある。
映画のテンションとしては、冒頭のベルが歌うシーンがクライマックス。見終わった後に、もう一度あのシーンが見たいと思うほどには。
レコ直のランキングで1位を獲得し、サブスクでも一気にランキングをあげてるのは、きっと同じように映画を観た後に余韻に浸りたいと思う人がいっぱいいるからなのだろう。ある意味、レビューのポイント以上にこの映画の評価を見定めるバロメータになっている様に思える。
まぁ歌が好評を博したのに本編はイマイチだった作品もあるんだけどね。
そんなこんなで、主題歌を大音量でリピートしたくなる位には、この映画は良い映画です。
2022.9.24 追記。ホームスピーカーで家で試聴するも、劇場程の感動は得られず。やはり、大画面+高音質スピーカーに勝るものは無し。
美女と野獣のオマージュなので一連のストーリーの流れはわからなくも無いが、終盤の流れは仮想現実の世界でリアルを晒す事への動機付けがメインであって、そこに現実世界での妥当性を論ずるのはやはりナンセンスに感じる。
時系列としてはUの世界で有名になる⇨リアルを晒す⇨OP。OPではUの世界で最も成功した人の一人としてbellが紹介されている。
子供の頃母を亡くし唄う事が出来なくなった鈴が、仮想世界で唄を取り戻す話だと思うのだが。
母の心情を理解し過去を乗り越えるため、Uの世界のbellのアンベイルという擬似的な死を乗り越える為の動機付けとして兄弟を救う話があるのであって、それ以外は蛇足でしかなく、なしては映画と言う尺の中ではこれ以上掘り下げるのも難しい。動機付けとしてはやや弱い事は否めないが、現実的にあり得ないと言ってる方達は単に読解力が無いだけの様に思える。
普普通に良い映画でした
ひさびさの細田作品。
未来の二の舞かなぁと心配しましたがとても良かった。
映像美、音楽などとても良かったし、敢えて美女と野獣のような演出を入れつつも全く違った展開にするなど、解りやすくも期待を裏切るような展開などを効果的に取り入れていて見所が多かった。
【考察】忍君にはお母さんが乗り移っている!
◆ ストーリー
内向的な女子高生鈴は友人の勧めでスマホアプリ<U>に登録する。<U>は登録者数50億人を超える巨大SNSで、会員たちはバーチャル空間でアバター(仮の姿)で交流を楽しんでいます。
<U> 内での鈴は歌姫ベルとなり一躍人気者となります。バーチャル空間での初ライブ中に突如竜と言う名の獣人が乱入してきます。彼はネット世界で言う荒らし行為を働いていてバーチャル空間では暴力行為を振るい、暴れまわっています。
なぜ竜は暴力的なのか、なぜ竜は時折寂しそうな眼をするのか、そんな竜をベル(鈴)は放っておけずそのあとを追っていきます・・・。
◆ 本当に恐ろしいスマホ依存
子供は父性と母性の両方の影響を受けて育ちます。鈴には母親がいません。幼い頃に川の事故で亡くなりました。鈴の父親は物語中父親らしいところが一つもありません(影が薄く、出てきても同じセリフしか言わない)。ですから鈴が内向的に育つのも不思議ではありません。
(※もう一つ父性・母性の影響の例を挙げると、エヴァンゲリオンのシンジ君。彼も母親を早くに亡くしていますし、父親も厳格過ぎます。その影響を受けて彼も内向的な性格に育ちました。)
性格が内向的で塞ぎ込んでいると、自分の枠組みから中々抜け出すことが出来ずに他者との関りを失い、どんどん自己肯定感が低くなっていきます。
私は鈴も自己肯定感が低い子だと思います。両親の影響に加えて <U> 登録初日にベル(鈴)の歌がバズってフォロワー数が爆増しますが、鈴は「たくさんの人が自分を批判している!」と大慌てします。大きな成功体験よりも、ネガティブな出来事にフォーカスするのは自己肯定感が低い証拠です。
自己肯定感が低いと、お酒、ギャンブル、ゲーム、スマホと言った簡単に手に入る刺激や快楽にドップリハマってしまい、そこから中々抜け出せなくなります。
家に閉じこもってゲームばかりしている自己肯定感が低い人がある日突然外の世界に出て「よし!就職するか!」とはなりませんからね。
私は鈴が歌がバズって、フォロワー数が爆増し、ファンの承認欲求などによる “一時的な” 興奮・快感・熱狂 ―― いわゆるドーパミン的幸福の中毒になり、<U>から抜け出せなくなっていく・・・・という展開になると思っていたのですが、実際はそんな展開にならなりませんでした。これには全く予想を裏切られました。
◆ つながり・愛による幸福=オキシトシン的幸福
鈴の周囲にはいつも人がいます。親友でありよき理解者のヒロちゃんや、所属している地域の歌唱サークルのマダム達、そして何かと気にかけてくれるイケメン男子忍君。
人間はリアルに人とつながっていると幸福を感じます。この時脳内からはオキシトシンという物質が分泌されています。友情による結びつきや、地域コミュニティに所属している帰属意識によりオキシトシンが分泌されるのです。
ギャンブル、お酒、スマホ、ゲームなどのドーパミン的幸福は幸福感が直ぐに切れてしまいます。一方でオキシトシン的幸福は低減しません。例えば、去年政府から特別定額給付金として10万円貰えるというニュースが流れた時や実際に貰えた時は興奮して喜んだものですが、いまだにあの時の10万円うれぴ~~~~~~~!!!!!とその幸福感が持続してる人はいませんよね?(むしろ「おかわりはまだか!」ともっと!もっと!の状態になっている人もいると思います。)
オキシトシン的幸福は低減しません。オキシトシンは赤ちゃんを抱っこしている時などにも分泌されます。例えば10日間連続で赤ちゃんを抱っこしても赤ちゃんはかわいいです。11日目に突然「赤ちゃんキッッモ!!!」とはなりません。
私は人とのリアルな繋がり、オキシトシン的幸福が鈴(ベル)の精神を健全に保っていたのだと思います。
◆ イチ推し!忍君!
忍君とは鈴のクラスメートで、学校中の人気者!イケメン!女子の憧れ!スポーツ万能!の男子です。しかし私は彼の魅力はそんなところではないと思っています。
忍君は何かと鈴のことを観察していて、微妙な変化に気づき「何かあった?何かあったなら言ってよ」と気にかけて声を掛けてくれます。多くの世の男性はこの辺り鈍感で観察眼がありません。(よく言う恋人が髪を切っているのに気づかないというやつです。)
学校イチのヒロイン、ルカちゃんも忍君を「よく気づくお母さんみたいだね」と彼を評します。
また、忍君は鈴がベルであることをいち早く見抜きます。男性でありながら、この観察眼の持ち主である所が彼の最大の魅力なのです!
さらに物語の最後で難事件が解決して、少し大人になった鈴に忍君はこう言います。
「これでもう鈴のことを見守らなくてよくなった、これからは対等に付き合えるな。」
2人はまだ友達同士の関係で恋愛関係には発展していません。このタイミングでこのセリフは暗に、
「懸案事項も無くなったことだし、僕は君に安心した。これからは恋愛対象として踏み込んでいくからね。」
と言っているように聞こえます。もうね、キュンッッッッッッッッッッッッッッッキュンッッッッッッです!!!天才です!!!巧です!!!策士です!!!!!!!!!!!!エロいです!!!!!(?)
◆ 大人はアテにならない
鈴の父親は影が薄く、出てきても同じセリフしか吐きません。地域の合唱サークルのマダム達は鈴に「幸せってなに?」と問われるとみんな「えっと、えっと・・・!」と慌てふためくだけで閉口してしまいます。サークル内で一番年長者のお婆さんも「この年になっても幸せなんて分からないわ」と穏やかに答えます。(ここめちゃくちゃ意外でしたね。)
物語最大の山場となる、鈴が一人で高知から東京の見知らぬ子供を救けに行くシーン。ここはかなりネット上でも賛否があるところですが、影の薄い父親が娘を信じて送り出すのは最大の功績だったと思います(現実的であったかは置いといて)。父性とは規律、規範を示すなどの他に「断ち切る」ものですからね。これが機能しないと子は地元や家にへばりつくようになってしまいます。(もし仮に鈴の父親が黙って飛び出して行った鈴に憤慨して「子供のお前のすることじゃない!!今すぐ戻ってこい!!」なんて展開になったら・・・恐ろしい事になっていたでしょうね。)
◆ 人とのリアルな繋がり
映画作品に置いて繰り返されるセリフは重要なキーワードとなります。物語の冒頭で巨大SNS <U> の広告コピー「現実はやり直せませんが、あなたも <U> でもう一度やり直してみませんか?」というセリフが作品中3度は出てきます。
しかしながら、<U> 内で人生をもう一度やり直すことが出来た!というようなシーンは一度もありません。重要なキーワードに見せかけたミスリードなのか、あるいは無機質な機械音声のそれは不気味な悪魔のささやきかもしれません。物語の比重もバーチャル空間での内容よりはリアルな繋がりの方に重きが置かれています。
物語最大のトラブルも人とのリアルな繋がりによって乗り越えていきます。ここがこの作品の肝だったように思います。ご時世的に我々の日常生活はどんどん人とのリアルな繋がりは薄くなっていく一方で、ネットの方が重くなりつつあります。ですが、ここで、今一度、リアルの繋がり、その大切さを見直す時だと私は思いました。
※ 今回の感想は下記の書籍で読んで得た知識をもとに書きました。
『父滅の刃』『精神科医が見つけた3つの幸福』『察しない男説明しない女』
今作のテーマ
この作品の一番のテーマは『母の死を乗り越えること』だと思います。
「なぜ母は自分をおいてまで見知らぬ子を助けて死んでしまったのか」という問いに答えを見つけられず、母を止めてくれなかった父親への感情も消化できずにいる鈴。大好きだった歌も母の想い出が蘇ってきてしまい歌えない。
そんな時に親友のヒロから勧められた仮想世界U。母への想いを“歌”という形で解放し、人気が爆発する。そして竜と出会い、集団の批難を意に介さない(ように見える)、自分にはない意思の強さに興味を惹かれ、その奥底に苦しみがあることを知り共感する。
鈴は「口では心配そうな振りをしていても、本当に助けにきてはくれない」という恵(竜)の言葉をうけて仮想現実から本当の自分をさらけ出し、一人で現実世界の恵を助けに行くことを決心する。小さい頃から鈴を見守っている忍やヒロ、合唱団、鈴の父は危険を承知しながらもその想いを汲み取って見送る。そして恵の父親との対峙を通して、鈴は母の気持ちに触れ、母の死に向き合えるようになる。
賛否が分かれているのはミステリー要素かと思います。母が子どもを助けに行った理由はもちろん、小さい頃の鈴の歌について具体的に示されないので、なぜ忍や合唱団が‘’BELL‘’であることを理解したかがわからない。また、合唱団と母、そして合唱団と父との信頼関係も終盤になってさりげなく示される。母への気持ち、竜への気持ちも事象ではなく歌によって表現されている。
それに50億のアバターから見つけるのも、それが日本人であることも出来すぎではあるでしょう。ただ、その奇跡も含めて一つの映画作品として楽しむことができました。
最後に恵と父親のその後ですが、私は警察への通報などはしていないと思います。「本当に助けに来てくれる人がいる」ことを示すことが恵にはこれから父と向き合う上で大きな助けになりますし、恵の父親がおびえていたのは恵を守りぬくことを決意した鈴の揺るがない覚悟を感じ取ったからだと思います。
この作品を映画館で観られて本当によかった。
今作のテーマと考えられた違和感
感想としては圧巻の音楽と映像美は間違いありません。
物語としては、人の本性が映し出されるネット上のUと、青春を通して、母の死を乗り越え成長する主人公すずの姿をベースに、二つの「欠けた」家族から映し出される父の在り方、家族の在り方、家族が残したものを題材によく作り込まれた良い作品だと思います。想像以上でした。少しテンポや爽快感が良ければ満点。と思いましたが監督の思惑にやられたのも含め⭐︎4.5から⭐︎5に修正しました。
すずの成長という物語とは別に、本筋といっても良い物語が紐解かれていきます。中盤、終盤から明らかにされるそれらを、一つ一つ紐解くと本当の物語が見えてくかもしれませんし、見終わった後に改めて紐解く事もこの映画の見どころだと思います。
まず大きく象徴されるのがすずとケイのふたつの家族です。
2人は全く異なるようで母が「欠けた」という共通点があります。母を失ってから二つの家族は大きく変化していったのでしょう。
決して恵まれたとは言えない環境のすずと、裕福で恵まれたケイ(恵)ですが、人の本質が映し出されるUにおいては美しく歌姫として皆から支持されるすずと、醜く忌み嫌われる竜であるケイを形作ることになったのは何だったのか。
その違いは亡くなった母へ想いであり、残された父の姿や周りの人たちだったのではないでしょうか。
大好きだった亡き母を否定できず、葛藤しつづけながらも心の中で成長し続けてきたすずと、そんなすずとコミュニケーションがとれずとも見守り続けてきたすずの父や周りの人達。
母の写真は破られ、父は子供たちの成長を支配下におこうとして抑圧された気持ちが歪に成長し続けてしまったケイの家族。
小骨のような違和感が多く、考え出すと、なるほどと答えに行き着きます。
対比をされる場面が多いためそれぞれの違いをまとめておきます。
1.居住環境
廃線予定バスの先にあるような田舎に住みとても裕福とは言えないすず
都心のしかも高級住宅街に住み裕福な暮らしと言えるケイ
2.父
すずの父はうまくすずとコミュニケーションを取れずにいますが、朝には学校へ遅れないよう声をかけ、毎日食べないと分かっていながら夕飯をすずにすすめてきます。またそれを食べないすずを叱ることはしませんが、終盤ではすずが夕飯を食べるというと好物のカツオのタタキを作ろうといいすずを見守り続けます。
ケイの父は社会的にみても地位のありそうな人物です。ルールを重んじ、父自身が家のルールだと語っています。
映画前半ではカメラに対し母が欠けても家族3人元気で過ごしていますと語る一方で、後半ではモノを壊し、威嚇し、ケイたちの間違いを叱責します。
3.亡き母への想い
映画の中ですずの母は濁流の中洲に取り残された子供を助けにいき亡くなってしまいます。
大好きだった母が残してくれた歌を続け、本人に自覚は無いかもしれませんが母と同じように片足を失った犬を助ける優しい気持ちを持っています。冒頭の「欠けた」マグカップを大事につかうすずの姿はよくそれを表していると思います。
一方で何故助けにいってしまったのかと、後悔や葛藤、否定的気持ちが心を引き裂いているように感じられますが、ケイを助ける事で迷いは無くなりすずは大きな成長を見せる事となります。
ケイの母は語られる場面は少ないですが、誰が割ったか分かりませんが母の顔から割られた写真立てが描写されており、母への否定的な描写がされています。
ここからは蛇足です。もしかしたらそうなのかなと感じたので記載です。
表情からして、単にケイの父は心の弱い人というだけかもしれません。
最後のケイたちを守るすずをケイの父が力づくで振り向かせる場面。
ケイの父はもしかしたらUの世界ですずの本当の姿を見たのかもしれません。もしかしたら隊長さん自身だったのかもしれません。だから振り向かせた時、繋がってしまったのかもしれません。
目の前にいるのがベルであり、ベルが竜を助けようとしていた事。そして2人が目の前にいる理由と、これまで敵として追ってきた相手が息子だったことに。
振り上げた拳を息子を救ってくれた相手へ向けれなかったのかもしれません。息子たちへの愛情はちゃんとあって、最初は息子たちを正しく育てようとしていたのかもしれませんが、仕事や発達障害のある息子への歪な支配へ変化してしまったのかもしれません。
それらをすべて処理できず腰を抜かし逃げ出したのでしょうか。まだそれならケイが救われるかもしれないし、良いなと感じます。
観てよかった。
SNSという顔が見えない世界だからこそ、簡単に流される大衆の意見を表現した皮肉さと、それ以上に人と繋がることができる世界、顔を知らない通しであっても生まれる人の想いは美しいことを描いた素敵な作品でした。仮想空間という完全な二次元の世界を描いたけれど、物語は全てリアル。だからこそ見る人は登場する様々なキャクターに自分を投影して見ることができるとてもリアリティが高い作品。
鯨のシーン、歌唱シーン、どれも臨場感溢れる映像で、見ていてとてもワクワクしたし、心が震えました。これはアニメーション映画だから表現出来ることであって、改めてアニメは良いなと思いました。
個人的なハイライトとしては、鈴が東京に向かうバスの中でのお父さんとのやりとり。「君はそれでも優しい子に育った。その優しさを伝えてあげなさい。」余計なBGMは一切使わず、お父さんの声だけの演出。温かく勇気つけてくれる心に沁みるようなお父さんの声がとても良いなぁと思いましたが、エンドロールで役所広司さんだと知り、納得でした。
震えながらも歌う鈴の姿に自分も本当に勇気がもらえました。観てよかった。家に帰ったら、ゆっくりパンフレットを読みながら余韻に浸ろうと思います。
美女と野獣のパクリ?いいえ、オマージュです。
Uという仮想世界の映像美、素晴らしい楽曲の数々、愛すべき個性的なキャラクター達、心に傷を負う少年少女が互いの存在によって少しずつ癒やされていく物語の展開。この映画を構成する全ての要素に魅了されっぱなしの2時間である。
主人公のすずは、仮想世界UでBellという新しい姿を獲得し、水を得た魚のように歌の才能を開花させていく(実際、Bellの衣装は花のモチーフが多い)のだが、Bellこと中村佳穂さんの心を震わす歌声は何度聞いても素晴らしく、是非多くの人にも美しい映像とともに劇場で聴いてほしい。
映画の中盤、ディズニー映画の「美女と野獣」を彷彿させるシーンがあるのは否定しないが、本作の主題は全く別のものであり、純粋にオマージュとして楽しみたい。個人的には、竜とBelleの関係は恋人同士というよりもむしろ母と子の関係に近いように思われる。
余談ではあるが、竜の城やお付きのAIたちは、秘密の薔薇と同様、現実では知的障がいのある弟の創造物なのだろうか…そういった裏設定があってほしいと願うのも密かな楽しみである。
最後に、本作は主人公すずの成長を通じて、人を傷つけるのが人であれば人を癒すのもまた人である、ということを教えてくれる。どのようなメッセージを作品から受け取るかは人それぞれだと思うが、単なるエンターテイメントでは終わらない何かがこの映画にはあるため、是非一度劇場で味わってほしい。
すずの成長に涙が止まらなかった。
自分が映画を見るまで評価などを見てこなかったけれど、意外と皆さん厳しくて驚いています。結論から言うと、この作品は今までのどの作品よりも素晴らしかったです。
途中から気づきました。すずはお母さんと同じことをしている。自分のことを考えず、目の前の困っている人のために動いている。そう気づいてからは涙が止まりませんでした。
龍のために、Uでオリジンとして歌う姿は圧巻で、声も本当に素晴らしかったし、歌も素晴らしかった。
龍を助けてしまう自分が、母親譲りなんだと父からメールで言われ、涙を流すシーンも本当に泣きました。
Uを通して、ベルを通して、すずとして成長していく姿が本当に感動しました。最後、素晴らしいUの世界ではなく、現実世界の空で終わるのがまた良かった。
エンディングも、すずがオリジンとして歌った歌を流しその余韻のまま終了。映画館を出ても涙が止まりませんでした。
最後に言いたいです。僕は本当にこの映画を見ることが出来て良かったと強く思っています。評価が低くても、あなたの目でこの映画をぜひ見てほしい。もしかしたら、あなたにだけ刺さる何かがあるかもしれません。
良作
レビューに酷評が目立ったので投稿します。
細田監督の作品をずっとみさせて頂いてきましたが、その中でも今回の作品はかなり満足度高いです。監督の代表作の1つになるのではないでしょうか。
脚本に対する数々の指摘については(最終局面で主人公が東京に助けにいく流れ等)、しっかり描いたら細かい描写で逆に冗長になってしまうリスクがあると思いました。
主人公の成長物語の中で、彼女をとりまく人たちの思いも含め感動しました。
同級生、父親、(合唱団のおば様方)との関係性については、ずっと彼女のことを見守っていた気持ちが想像できれば、十分伝わってきますし腹落ちします。
龍を助けにいくシーンも、今までのバーチャルからリアルの世界で、主人公単独で助けに行くことで十分。プロセスは気にならないです。
総じて
素晴らしい映画だと思います。
監督、制作スタッフの方々ありがとうございました。
歌よ、導いて…
初日にIMAXで鑑賞。
そして今も映画の世界に魂は置いたまま。
上映開始数秒後なんだコレはーーーー!?という今まで体験したことがない映像が全身に降り注いだーー!
私の感性が刺激されて胸はバクバク。もう泣きそうだった。
ベルがクジラに乗って歌った最初の曲がいきなりミレパーー!?
す、すごい。いきなりストレートパンチをくらった気分だ。
出し惜しみしないってことは自信のある曲がまだ続くのねーーーと思いきや予想通りの歌歌歌。
中村佳穂さんは天才だとインタビューした日テレの森アナが言ってた。彼女を検索すると〝中村佳穂 天才〟と出てくる。
そう彼女はまさに選ばれし者だった。
歌が上手いアーティストはたくさんいるけれど彼女には歌が上手いと言う表現では足りない。
事前にみてしまった生配信で細田監督が言ってたのはこれかーー!と思った。
〝中村佳穂さんは歌の神様に愛されている〟んだ。
表現力が神がかっている。聴く人の魂を吸い込まれる。
だから鈴の初ボイキャスも当たり前に素晴らしい。
彼女は美大受験するくらいだから造形力もおそらく素晴らしいのだろう。
つまり中村佳穂さんは表現力の天才なんだね〜。
もしかしたら話す言葉や文章表現も卓越してるのかもしれない。
この数ヶ月楽しみで寝ても覚めてもこの映画のことばかり考えた。
サマーウォーズ、時かけ、バケモノの子、未来のミライも大好き。私は細田守監督の作品と気が合う。私はきっと人の成長物語が好きなんだ。
細田作品の主人公はいつも普通の子ども。
根底にある共通テーマは〝人の成長〟だと思う。成長した雨と雪がそれぞれの道を選んだように。
気弱な高校生の健二が事件を解決したように。
イヤイヤ期のくんちゃんがお兄ちゃんになったように…やがて成長していく子ども。
細田監督には小さなお子さんがいるからご自身の思いを作品に込めているようにも思えるし、仮想空間って一見すごく壮大な世界のように思えるけど実は日常のなかに主人公は普通に生きている。
だから細田作品に私は気持ちを重ねながら何回も映画を楽しめるのだと思う。
インターネット空間の仮想世界U…煌びやかなドレスを身に纏い歌うベルは輝いて美しかった。
でもね…カリスマ性のある歌姫ベルじゃなくて実世界の地味な高校生の鈴が竜を救ったんだよ。
ミレパの曲は良かったけど、中村佳穂さんが作詞した劇中歌も鈴の想いが伝わって鳥肌が立った。
実世界のなかで自信が持てず下を向いて生きている人たちへのエールにも受け取れる映画。
あなたは誰?
あなたはあなたでいいんだよって。
また観てから感想は追記しますね。
1回では語り尽くせないから…
とても好きな作品です。
限られた上映時間の中で、
ネット社会について描かれています。
わざと否定的な意見もでるような展開も含ませたのかなと思ったりもします。
仮想空間世界では合理的でないかもだけど、人は会って理解し、助け合う事がとても大切ではないかと、この作品を観て感じました。
女性の方が多く観てたと思います。テンポも良く面白く観させていただきました。
良かった。
世の中のレビューをチラ見してから鑑賞してきました。おそらく世に沢山いると思われる「細田さんの作品は一通り見てるけど、だんだん悪くなってきているよね〜」的印象を自分も共有していて、チラ見した「やはり脚本は細田だけだった…(残念感)」とか「未来のミライよりは面白い(笑)」とかいう感想にも「やっぱりそんなもんか…」と思いながら、しかしその一方で、「面白いか面白くないか」じゃなくて「好きか嫌いか」だよねとは思い、それでも「今回が最後かもな」とか思いながら見てきた感じです(なんやねん)。これも月並みな意見として、細田さんが大変優れた演出家であることは間違いないと思っていて、例えば前出の「未来のミライ」においてももちろん演出が素晴らしい箇所はあるんだけど、でもそれが作品の核になかなかコミットしていかないなー感を個人的に残念に感じてたりしました。
と、ぐちゃぐちゃ書き出しましたが見てきた感想は「良かった!!」(シンプル)。
確かに、パンチの効いた名セリフとかは無かったけど、物語はきちんと主人公に寄り添っていて、その感情を吐露するシーンにも充分な間が取られていて、シーンとしての(演出の)説得力が主人公の成長としっかり結びついている作品だったと思います。
様々な要素が寄せ集められている感じが未消化に思えたり、説明が充分にされておらず突然で無理筋すぎる展開に感じたりすることはあるかもしれないけど、自分的には、現実で目にする事象でも寄せ集められていて、説明はもちろんなくて、それゆえに未消化で、無理筋に見えることは沢山あるので、一概にそこが問題だから「面白くない」とはならないかなあ、と思っていて。まあ「作品」として作っているんだからその辺に整合性や説得力があるのは当たり前だろ!ってこともあるかもしれませんが、そこは人それぞれで、何を期待して行ったかによるかなあと思っています。その流れで言えば、冒頭の一般論は細田さんの昔の作品にあったものを期待して行ったらなくてがっかりした、ってことなのかもしれません。でも、今回の作品では、「この路線なら」まだ「やれるじゃん」(上から)と思いましたし、それは何より主人公の描写に説得力もしくは一貫性があったからかと思います。
まああと特に今回は「歌」のおかげで…って意見ももちろん多い訳ですが、そこであれあれ?とか思ったりします。借りることのできるのは「脚本」の力だけでは無いよね、作品を引き上げるために必要なものをディレクションするのもまた「監督」の力だよね、と。またまた出しちゃいますが、「未来のミライ」では主人公の「声」を好き(許せる)かどうかが個人的に評価に大きく影響しているんじゃないかと思っていて、それはそういうディレクションをした細田さんを許せるかどうかということだと思ってました。その前の「バケモノ」でもそうでしたが、細かなディレクションが作品を損ねているなあと感じていて、おおげさに「大丈夫かいな」とか思ったりしてましたけど、今回は「大丈夫」って感じられて良かった(上から)。
「U」に繋がってるときは人はどうなっとんねん!!
とか
あの情報で現地にたどり着くわけないやろ!!
とか
外人やったらどないなっとったんや?
とか
そりゃまあ「そこが許せない」って言われたら「それはそうでしょうね」と思わなくもない、ご都合主義が過ぎると言われればそう言えなくもない点も沢山ありましたけど。
私は個人的に「今回は騙されても良いかな」「許せないって程でもないな」って感じで、どちらかって言うと「好きな」作品だったから「あり!」ってなりました。
バランスやな。
良かった良かった。
細田監督が元々嫌いな人は、まあ元から見に行かないでしょう。
細田監督は好きだけど最近のはあんまり…って人は見たら良いかもしれません(悪いかもしれませんけど)。
「細田はもうダメだな!」とか言いたい人は、まず見ないと。見てからじゃないと言ったらダメですよ!興行が成功したら残念な人になってる可能性もありますし…(いや、マジョリティが正しいわけじゃないって映画内でも言ってたからそこはいいのか…)。
同じ系列で「サマーウォーズ」があるので、敵?の設定にもやもや感があってサッパリしてない分「傑作!!」とか言いづらいってのはあるかも。でも、最近の細田作風である社会性をねじ込んで作ったにしてはよく出来てるし、何より大きな映画館で見るには良い映画かとはおもいます。重ねてになりますが、個人的には作品にそれほど違和感を感じずに細田演出を堪能できたのが良かった。
以上、とっちらかってますけど個人的感想でした!
(追加)お母さんが命がけで川に入っていくところの作画が素晴らしくて。背中がその決意を表してる!って動きになっている(気がする!<思い込みか?)。主人公が最後に見た映像でもあるから、個人的にはキーアニメーションになってる。ラストの助けに行くのは実際に行かなくてもネットで助けを呼べば良いのでは?って感想もありましたが、実際に行かないと主人公的には川に飛び込んだことにならないんだよね、って(勝手に)思ってます。
あと、⭐︎5はちょっとつけ過ぎなんだけど、「3」てこともないやろって事で、全体を押し上げる的に付けました(やってみる価値はありますぜ!!)。悪しからず。
酷評されるほど悪くはない
レビューを読んでいるとけっこう辛辣なものが多いけど、そこまで悪い内容ではない。むしろ、いい作品だと思った。
飼い犬の前足が片方なかったり、欠けたマグカップを使っていたことについて、説明がないって怒っている人もいたけれど、それは自分が勝手に話の伏線だと思ったものが回収されなかったという消化不良なだけだと感じた。実世界だって気になっても直接面と向かって相手に尋ねないこともたくさんある。
アニメ作品を見る目が肥えすぎた人たちが、細田作品にすごく多くのものを求めすぎて、期待値との乖離を嘆いているようにも見える。
楽しめました
最近涙もろいので声が出ないように苦労しました。
お母さんはなぜ知らない子を助けるために私を置いて死んでしまったの?この疑問が主人公の女の子の心を閉ざし、好きだったはずの歌も母との思い出が甦り拒否反応が出てしまう。
仮想世界で別人になることでようやく歌えることに気付く。やがて自分のように心に傷を負った竜を放っておけなくなり彼を助けるために無謀な行動をしている自分に気付き母も同じ気持ちだったのだと悟る。決して愛されていなかったわけじゃないと、そして母の遺伝子をしっかりと受け継いでいると。
ディーテルは省略されてたり説明されないので人によっては話についていけないと感じる方もいらっしゃるかもしれませんがメッセージを感じて身を委ねると楽しめますよ。
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