「表面しか見れていない人に軽んじられているのが残念。」竜とそばかすの姫 K→さんの映画レビュー(感想・評価)
表面しか見れていない人に軽んじられているのが残念。
今作ではそもそも現代社会のインターネットの匿名性等の点から色々な部分を敢えて詳しく描写していない作品だというのは恐らく映画を観た方全員が分かっていると思います。
ただ口コミを見る限り映画のテーマを匿名性という部分だけに着目している表面でしか観ていない人にとっては滑稽に映るシーンがあったのかな?と感じます。
過去の母親の行動を理解出来なかった筈の主人公が実際に現実と仮想の世界での両方で起きて感じた出来事により名前も知らない筈の子供を守るというような母親、一人の大人としての行動を取っていく事でかつてのトラウマに囚われていた子供の自分から大人の自分へと成長を遂げていくという点ももう一つの今作のテーマであると思います。
そういう点を理解した上で各シーン・物語の展開・各キャラの物語上での役割・心情を観ていくのと、何も考えず素晴らしい映像と音に目を奪われ惰性で映画を観て本質的な部分に触れずに表面的なストーリーの解釈だけで理解しようとするのは物語の流れ的にも不自然に感じてしまう点も多くとても勿体無いと思います。
深く触れられてはいないもののUがどのようにして生まれたか?だったりUの中でのキャラの人格形成に関わる部分の仕組み等、作中で最初に説明がしっかりされているにも関わらずその点をストーリーに繋げて理解出来ていないのか見ていて???となる点を疑問として挙げてる人もちらほら…
自分の浅慮さに気付かずにそういった点やシーンを揶揄している事で作品の価値そのものを貶めているような口コミが多く見られることが自分にとっては非常に残念です。
DVの父親が逃げたシーン等も特に笑い物にされていますが、あのシーンは主人公が最初理解出来なかった自分の母親の行動と同じことを図らずもなぞるような行動を取ったことで初めて子供の側から大人へ…母親の側へと成長を遂げられたシーンだと思います。
DV父親もどのようにして暴力をするようになったのか直接描かれませんが妻を亡くして、かつ片方は何かハンデを抱えている子供を育て上げていく不安や重圧に負けてしまったというような現実的にはあり得なくもない無い境遇でしょう。
子供である竜が母親の愛に飢えBelleに甘えるような描写がありますし、あの父親は子供達を庇うまだ完全に大人とは言えない鈴の毅然とした態度に亡き自分の奥さん、子供達の母親の姿を重ねてしまい自分の"親"としての在り方過ちに気付き怖くなってしまったと考えれば自然かと思います。
そういう点で鈴の父親とあの父親とでは対比になっていると思います。
子供達の母親の写真であったり、既に大人な幼馴染の忍が見守る側としてまだ子供の鈴を過去から解放するために大人になるように仕向ける行動、発言であったりしっかりと意味のある描写もされていますし。
作品の受け取り方は人それぞれとは言え限度があると思います。
感じ方に玄人も素人もありませんが、今まで数ある素晴らしい作品を生み出してきた方が今回敢えて私達にも気付けるようなこういう展開のストーリーを描いているのに対し、物語の奥底の別のテーマに対して深く考えず表面上だけでしか見ていない捉え方で批評をするのもおかしいと思います。