「良く言えば「尖り」悪く言うと「雑」」竜とそばかすの姫 Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
良く言えば「尖り」悪く言うと「雑」
待望の細田守作品
…といっても自分は観たことが無かったので
公開までに一通り過去作を観ておくことにしました
時をかける少女から未来のミライまで観て
細田作品には共通した世界観があり
そこを知りながら観ていかないとテーマが
わからない部分もある印象でした
個人的に一番良かったのは
「おおかみこどもの雨と雪」
いきなり狼男というファンタジー要素を提示
したおかげで世界観がつかみやすくメッセージ性も
明確でわかやすかった
「サマーウォーズ」は後半のスパコンや池に漁船を
運んでくる展開でなんか白けてしまいました
人類の危機だから急にそういうなんでもあり展開に
なっちゃったのだとすれば
この監督そんなデカいテーマは向いてないと
いう気がしました
バケモノの子は渋谷にまたがる2つの世界を
九太が普通に行き来し始めてから白けたし
未来のミライは30分くらいで
エピソードが区切れており
必然的に4歳児が有能にならざるを得ず
奇妙な作品に見えました
で今作の感想は
ネットの仮想空間などこれまでの細田作品
のエッセンスを踏襲した
ビジュアルは素晴らしくスタジオ地図の
底力を存分に感じることが出来ましたが
そういう過去作からの世界観からの応用
なしではキャラクターの行動が突飛で
つかみづらい部分もあり見終わって
よくよく考えるとチグハグさが残る
感じでした
高知の片田舎で暮らすそばかすの少女すずは
幼い頃大好きだった母が洪水で川の中洲に
取り残された子供を助けるために死亡
無謀だと批判する意見も多く
なぜ母が他人の子供を助け自分を置いて
死んでしまったのかを理解できぬまま
塞ぎ込んで父との関係もうまくいかず
コミュ障一直線の毎日を過ごしていました
細田作品ではお馴染みの超遠隔地から
通う高校は田舎とは思えない全く普通の高校
には幼馴染みで人気のある忍や
陽キャのカミシンに学校一の美人のルカ
などにコンプレックスを抱く日々
そんなある日親友のヒロに進められた
もひとりの自分になってなんでも自由だ
と謳うSNSアプリ「U」をすすめられ加入
UはサマーウォーズのOZにだいぶ似てますが
アバターを任意で作れず本人の容姿から
自動的に生成されるシステムのようで
いきなり思い通りにならないんですけどと
実在したらその時点で非難囂々だろと
思っちゃいますがまあいいとして
すずはUだとそばかすのある絶世の歌姫「ベル」
そこで現実世界では出来なかった歌を
思う存分歌うとたちまち話題が拡がり
50億人のフォロワーを付ける事になります
これにより自信を付けたすずは現実世界でも
元気が出てきて生活に張り合いが出てきます
そしてネットワーク内でのコンサートの日に
迷い込んできたお尋ね者の「竜」がコンサートを
台無しにしますがベルはその竜に惹かれる所が
ありネットワーク内を探し求め会うところから
すずとベルを巡る運命は急転していきます
Uの世界は現実のSNSの世界の現実を示しており
ひたすらリア充を装う者や特定ユーザーへの信者やアンチ
秩序を振りかざし取締りに躍起になる自治厨など
あるあると感じられるところに
OZの頃より現実のネット世界が浸透して
状況が変わったんだなと思わされました
仮想空間の自分は現実世界と別人になれると
システムは謳いますが結局行動原理は一緒で
中身は一緒という事のように感じましたが
あんまりこの映画はそのUの世界と現実の
登場人物がみんな仮想世界で繋がってるわけでは
ないのでどうも印象が薄くなっている印象です
世界的アプリらしいですが結局
すずとヒロしかやってないっぽいのは
物語としてどうなのか
竜の正体に会いに行くシーンも取って付けたように
場所を特定し急がなきゃと言ってるのに
深夜バスだったりお金どうしたのかとか現実世界の
現実性をすっ飛ばした展開に置いてけぼり
細田作品は後半にシナリオがだだくさになりますが
今作もそうなっちゃってる感じでした
別に大阪とかで良かったんじゃないかなぁ
リアリティとファンタジーの境目が曖昧なことで
観ている側はどこに視点を置いていいのか戸惑うところに
描写とことん引いたカメラで客観的と
ちぐはぐな感じになってしまうのは今作も変わらず
悩ましいところでしたが
未来のミライやバケモノの子よりは
まとまってたかなという気だけしました