「序盤の役所(風)手続きが面白い」ワン・モア・ライフ! 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
序盤の役所(風)手続きが面白い
死を意識することで人生は変わる。そんなテーマを秘めた作品はきっと新旧問わず、世界中に存在するのだろう。その一つ一つをとって国民性を理解した気になるつもりはないものの、本作が大事件や大展開ではなく、むしろ家族や愛する人との関係性に焦点を絞っていく様に、新鮮味というか軽いカルチャーショックを覚えた。その序盤は快活で、死の瞬間にこみ上げるモノローグやそこに広がる情景も際立っている。さらには役所の待合室のような場所で繰り広げられる”手続き”の数々は、背後のエキストラの反応もあって、ワクワクするほど面白い。間違いなく本作でいちばんユニークで独自性のある見せ場だ。ここで巧みに掌握されたペースがその後は穏やかにペースダウンしていくのが残念なところ。フラッシュバックの多用も、物語を紡ぐ上で必要とはいえ、淀みない流れにあえて休符を差し込むリスクを伴う。いいところもたくさんあるのに、少しもったいない気がした。
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