レンブラントは誰の手に : 映画評論・批評
2021年2月9日更新
2021年2月26日よりBunkamuraル・シネマほかにてロードショー
「レンブラントのお引っ越し」+「レンブラントは本物か?」+「レンブラントは誰の手に」
この映画の原題(英語題)は「My Rembrandt」です。 つまり「私のレンブラント」。レンブラント所有者が何人かと、レンブラントの取引を仲介する画商らが主要な登場人物です。
最初に登場するのは、スコットランドの古城に住む伯爵です。数多くの絵画を各部屋に飾っていますが、お気に入りのレンブラントを掛けている場所が、今ひとつしっくり来ていない。彼は、城の中で、よりレンブラントに相応しい場所を探そうとします。題するなら「レンブラントのお引っ越し」という感じ。
次に登場するのは、ヤン・シックス11世という若き画商。彼は、オークションで格安で落札した無署名の絵画が、レンブラントの作品だと踏んでいます。なんと彼の祖先は、レンブラント本人に肖像画を発注した歴史があり、彼はその絵とともに暮らしてきました。だから、鼻が効く。しかし、絵をちゃんと鑑定し、本物のお墨付きを得ないことには価値が上がりません。各方面の権威が集まって、鑑定が始まります。題して「レンブラントは本物か?」
そして、自宅の寝室に2枚のレンブラントを飾り、毎日愛でていた大富豪も登場します。彼は、遺産相続にあたって、莫大な相続税を支払わなくてはならなくなり、泣く泣くこの2枚のレンブラントを売却することにしました。その金額たるや、200億円。ルーブル美術館とアムステルダム国立美術館が争奪戦を繰り広げます。しかし、両者ともに予算オーバー。さあどうする? これが「レンブラントは誰の手に」。この映画の邦題は、このストーリーに由来するものでしょう。
もうひとつ「レンブラントにキスした男」の話もありますが、そこはあんまり記憶に残りません。
以上、レンブラントを所有する者に関するオムニバス映画のような、実に贅沢な作品です。レンブラントの創作の特徴や秘密、レンブラント絵画の市場での価値、オランダにおけるレンブラント作品の意義。
私はこの映画を見て、レンブラント作品に関する認識が激変しました。次にレンブラントを鑑賞する機会が、楽しみで仕方ありません。
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(駒井尚文)