「初期作品群との決別が生んだ、パロディとしての高い品質」映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園 今日は休館日さんの映画レビュー(感想・評価)
初期作品群との決別が生んだ、パロディとしての高い品質
学園ミステリーをベースに、悪魔との契約やAIによる支配など、“あるある”な映画設定を散りばめた作品。何かしらのジャンルを土台としたパロディが同シリーズの基本だが、今回はその「パロディとしての品質」はある程度完成されていると思う。
特に、希望を抱えるが故に悪魔と契約してしまう、相反する風間君の感情はしっかりと骨太に表現されていた。
原恵一・本郷みつるの一連の作品群における「混沌とした遊び」を切り捨てたことは、評価すべき判断だと思う。これまで同シリーズはどうしても、初期作品群に引きずられ、その模倣を繰り返し、転んできたきらいがある。
ストーリーをぶった切る突然の歌唱シーンに象徴されるような遊びは、原恵一・本郷みつる両氏の力量で成し得るもの。全体の構成やテンポづくりを軸とした、高いレベルでの土台に成立するものなので、表層的にそれを切り取っても浮いて滑るのがオチ。これまでそのせいで作品全体が崩れることも少なくなかった。
それをしない、という判断はある種の「諦め」でもあると思うが、はっきり言って致し方ない。そこまでに原恵一・本郷みつるの一連の作品群は手が届かないレベルにあるし、現代のコンプライアンスも、その原因のひとつだろう。
古くは「混沌」に象徴された“クレヨンしんちゃんらしさ”が、「感動」に置き換わっていることに寂しさを感じるのは正直なところだが、“初期作品原理主義者”も、いい加減に諦めるべき段階にある。
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