「表と裏からの再現ムービー」フロッグ bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
表と裏からの再現ムービー
『フロッグ』という題名から、以前、妻夫木聡が演じた『ミュージアム』のカエル男のような、猟奇的殺人事件を予想して鑑賞。しかし、子供の誘拐事件をモチーフにしているものの、決してグロさはなく、前半はホラー的な不気味さを、後半からは、誘拐と殺人事件のサスペンスとして、どんでん返しの真犯人へと結びつけている。
物語は、ある田舎街で、2件の男児誘拐事件が起きる。そこには、数年前にも同じような誘拐事件の現場に残されていた緑色のナイフが、再び残されていた。その捜査を担当するのが、刑事のハーパー。そのハーパーの自宅では、不可思議な出来事が、次々と起こり、ホラー的な怪現象として、恐怖を煽りながら、後半への布石としてバラ撒かれていく。
そして、後半。前半にバラ撒かれた布石の表シーンに対して、裏シーンを描くことで布石を回収し、怪現象の正体が、明らかになっていく。明らかになってみると「なーんだ」となるが、そこは、前半と後半のそれぞれのシーンが、絶妙にリンクして、正に、『カメラを止めるな』とも言えるような展開。
そして、怪現象の正体と共に、誘拐犯人の正体も明らからになっていくのだが、その間に不倫絡みの新たな殺人事件も発生し、こちらの真相も、見事なミスリードで、サプライズな展開になっている。ある意味、サスペンス・ミステリーでは、禁じ手でもあるが、何とも言えない結末に、誰も救われない、イヤミスなエンディングとなっている。
ストーリーとしては、なかなかよく練られているし、引き込まれる展開であった。しかし、誘拐犯人の動機が、あまりも浅いというか、ハッキリしないのが解せなかった。もう少し、納得できるそれまでの経緯を、描いて欲しかった。
出演している俳優さんで、かろうじて知っていたのは、刑事の妻役のヘレン・ハントだけで、主演のジョン・テニ―は、これまでの出演作品の記憶はなかった。ヘレンは、以前、アカデミー助演女優賞にノミネートはされたが、本作では、急に歳をとったなぁと感じた。