劇場公開日 2021年1月29日

「B級作品だが悪くなかったと思う」ラブ・エクスペリメント 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5B級作品だが悪くなかったと思う

2021年2月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 この手の実験的な映画にはたまにお目にかかる。大抵の場合、最後のネタバラシが主眼であり、それによって観客を驚かせたり感心させたりする。しかし本作品は少し違う気がする。
 小柄で肉感的な若い女がひとり、足を投げ出し背中を壁に預けて床に座っているシーンからはじまり、ストーリーはビデオゲームの謎解きのように進んでいく。なぜ閉じ込められているのか、なぜ怪我をしているのか、場所はどこなのか、時代はいつ頃なのか。観客の興味は当然そこに行く。
 原題の「Hippopotamus」は「河馬」という意味の英語で、脳の一時記憶の場所「海馬」の英語「Hippocampus」との言わばダジャレである。原題を観てから鑑賞していたので、河馬はいつ登場するのだろう、とても河馬が登場するようなシチュエーションではないけど、などと考えていた。河馬と海馬の聞き間違いの会話のシーンで、一気に本作品の状況設定が理解できる。
 男の置かれた状況は非常に困難で、なまじインテリだから公的機関に頼ろうとしなかった。その決断がなければ本作品は生まれない。無理矢理感のある設定だが、人の脳がどのように世界を認識し、信頼と疑念を解決しようとするのかについては興味深かった。愛は信頼がなければ生まれない。信頼が崩れれば愛も崩れる。B級作品だが悪くなかったと思う。

耶馬英彦